道場主今月の一言

誠の恋をするものは、みな一目で恋をする。」
ウィリアム・シェークスピア
 

銀座俳句道場 道場試合第98回決着!!  

6月の兼題は 「鮎」、他、自由でした。



 猛暑お見舞い申し上げます。

※「鮎」の特別賞(名誉賞)を、のぼるさんと二穂さんに!
  難しい「鮎」三句にチャレンジした勇気と成果。
 

 

川昇る汽船の音や心太        明法
  一寸「昇」の字が気になりますが、何とも「心太」が上手く働いて、川風の中に居る思い。

 
渓谷の一軒宿やあゆの飯        満子
簗の鮎跳ねて日暮の来たりけり          章司
  満子さんの句は「あゆの飯」で纏めたところ巧者。
  章司さんの句は日暮という光源の角度の低さが、一句を平らかに静かに広げていきます。


 
運慶の仏頭朴の花開く         弘子
  仏塔の見事さ、その大きさと朴の花の一輪の見事さ。
  小さな花では、「運慶の仏頭」を受け止められなかったでしょう。

 


【秀 逸】

梅干や母の介護の薄き粥          亀山龍子

  「薄き」が、何ともせつない一句です。

ストラップきらきらと子に夏来たる       あゆ

  いいですねー。ぶらさげた沢山のストラップの輝き。

南風吹くトランペットの軍歌かな       照子 

  軍歌も色々ありますが、勇ましいのも、哀切なのも、やはりトランペットでしょう。

 

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)


鮎食し残れる骨の美しき                竹風
  つゆ晴れ間我が一番機飛び立てり
    「我が」が解るようでいま一つ。

西海の涼しき風や唐津城 
鮎放つ川の辺に献花台                亀山龍子
媼摘む翁の炒りて新茶かな
    「摘み」でしょう。

  竿の列深みの一つ鮎光る                あゆ
    上五、中七の繋がりが悪いです。上五と下五を替えれば繋がります。
  寄り添うて産卵あとの緋鯉かな   

  鮎釣りの岩になりたり仁王立ち             瞳夢
    「仁王立ち」だけで、中七は削る努力を。
梅雨の入り制御落下の「かぐや」逝く
電柱の カラス染まずや大夕焼け
    「や」よりも 「カラスの染まず」と。

炭一俵河原に熾し鮎かぶる               韶一
    「かぶる」をもう一工夫。
  朝顔の胸に咲かせて貝の口
    「胸」は前、「貝の口」は後ろ姿。どうも前を見たり後ろを見たり、気忙しいです。  
疎開児の古希の祝いや雲の峰
    疎開児童も古希。よくぞ生き抜いた!の思い。
    「雲の峰」が、あの夏の暑さを思い出させましょう。


  レンズよりはみ出す丘の虞美人草           高風
    悪くないのですが、「レンズ」と焦点を狭めているのに、「丘の」が来ると、シボリが甘くなります。
  生きざまに鮎串刺しに焼かれをり
    「生きざまや」の方が、鮎の姿が見えてきましょう。
焼き鮎にほれぼれしたる色香かな    
    美味しそう!「に」だと「ほれぼれとせる」でしょうか。

渓流を望む座敷や鮎料理                照子
朝市の鮎の串焼き人群るる

誰がこのみ見合の席の鮎のわた            章司
    仲人が酒飲みか、婿候補がノンベエか。まさかお嫁さん候補が…?
あゆの香のとへにはたへに鮎の宿
    「十重に二十重に」はいささかオーバーながら。

  解禁を待ち寝ねられぬ鮎の宿             紫微
エジプトの王の棺や矢車草
  夕づつの陰しづもれる青田かな
    「夕づつの影」でしょうか。美しい句ですが…。

清流の苔の句や鮎の宿                 有楽
    多分「匂」かと。
  紅花の歴史背にして最上下る
雁渡る太湖にジャングも連なりて
    「Junk」ジャンクでしょうか。「も」は削りましょう。

余生とてゆるゆるゆこか鮎の皿            意久子
  こーひーのカップに一礼夏に入る
    どういう「一礼」なのか?
うせ物の失物のまま五月晴れ
    なかなか出て来ない「うせ物」。
    気には掛っているけれど、家中ひっくり返す程ではない感じが、「五月晴れ」で伝わります。


  清流に眩しく光る鮎の群れ                方江
万緑やトロッコ列車に声満ちて
鮎の骨するりと抜けて峠茶屋
    結構ですが、中七はしばしば見かける措辞。

  かっぱ淵河童出で来ず蛙なく               満子
陸奥の空まさをなる聖五月

鮎の宿裏庭にあるすべり台                天花
大西日割り箸で作る五重の塔
    なんとなく爽快でない感じが「大西日」で伝わります。
千代紙で折る楊枝入れ梅雨の底
    下五を、上五に持ってきてください。

  滝落ちるやがて行く先鮎の川            さかもとひろし
ふた心なき姿して囮鮎
  明日のことおっとどっこい蝦蟇の相
    下五に対して、中七がいささか軽い。

歌仙巻く 鮎を肴に 反省会               河彦
    「鮎を肴の」と。
  鮎鮨を 帰郷の前に 手配して
    あまり説明し過ぎないように。
    「故郷へ土産二折鮎の鮨」

鮎自慢 聞いたふりして 箸運ぶ
    「又だ」と思いつつ、でしょうか。

鮎食めば水の速さを思はるる              明法
    いいですねー!
  手をつなぐ男勝りの浴衣かな

浅き瀬の鮎きらきらとつづきけり            萬坊
  うぷうぷと鮎の語りし海のこと
ぢいちゃんの手の皺ふかくほたる住む

鮎釣やきらりと光る返し針                のぼる
串の鮎炉辺にさすや雨上がる
月いろの少しまだらに鮎の肌
    結構です。殊に二句目、三句目やわらかな抒情と、チャレンジと。

雨後三日濁り薄れて鮎の渓               二穂
良き囮えて朝焼けの渓に立つ
夕暮れて川風かよう鮎の宿
    三句、きっかりと揃っています。殊に二句、三句目結構です。

  亡き父の好みし鮎の目は澄みて            みどり
時の日にとけいそう咲く朝の路
つばめ魚あなた目指してまっしぐら
    いいですねー!

  湯気を立て大鉄鍋に鮎の飯              弘子
    「湯気立てし大鉄鍋に…」と。
  のびやかな素足はにかむ赤い爪

鮎好きの亡き友呼ばん酒匂川             悠々
    静かな切なさが迫ってきます。