道場主今月の一言

よき友人を得る唯一の方法は、まず自分が人のよき友人になることである」
ラルフ・ワルド・エマーソン  
( アメリカの詩人・思想家 )
 

銀座俳句道場 道場試合第78回決着!!  

月の兼題は 「流れ星」、他、自由でした

 まだいささか取り込んでいて、今月は「選評」のみで
 お許しの程。
 まだ九州地方は日中30度を越える予報などが目に付きます。
 とは言え、しっかりと秋への足音。くれぐれも猛暑のお疲れに
 ご留意下さい。        (谷子)

   面白い句材です。それでいて句材に溺れていません。
 
   「犬の子」「猫の子」は春の季語ですが、今や年に二回三回の誕生。
   今生まれた二匹の犬の子。静かな夜の充足感。
     あゆさんの今月の作品は揃っていました。「天」「人」両賞獲得は初めてでしょうか。
   「峡晴」と「柿の秋」という纏め方で、抜けるような青空と柿の赤さが強い印象で迫ってきました。
 

【入 選】

監視カメラ今宵の月を捉へたり    のぼる

秋桜洗濯好きは母似かな      天花

明月や携帯電話かけてみる     二穂
ふるさとの月がメールで送られて  河彦
のぼるさんの句は「監視カメラ」というものによって都市の名月が、天花さんの句は「秋桜」で風を感じさせてくれ、洗濯物がぱりりと乾く感触を伝えます。二穂さん、河彦さんの句は似通ってますが、情感の方向性がそれぞれに楽しめました。

 

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)

 あとひとつもう一つと流れ星          方江
   <あとひとつもうあと一つ流れ星>
朝焼けて琴引浜の大曲り
サイダーの泡の向うや船が行く

 仰ぎ見る流星のごとサテライト         竹雄
縁側に供えし月見団子かな
 消してより隣の音や虫時雨
   消してよりーー何を消す?。「隣の音」という聴覚関係に対して「虫時雨」も同じ聴覚で捉えたものが重なります。中七が「や」で切れているので、「隣に居るような虫時雨」ではないでしょうから。

里山の黒き眠りや星流る                      瞳夢
 露草や手折らむとすれば濡れにけり
    <露草を手折らんとして濡れにけり> 
 ドア開き乗客と来る秋の風 
    同じような発想の句は沢山書かれています。

普陀落の海へ尾をひく流れ星            あゆ

救急の音近づきて流れ星               正巳
 庭先の萩垂れふさがりて行きがたし
唯薄すすきすすきの生石山(おいしやま)
     「唯」は「ただ」と平仮名の方が。

蔭玄き東寺の塔や流れ星                のぼる
背番号並べて案山子祭かな

流星を多く見た日や長電話            吐詩朗
 機械刈り稲架の温みのなき風情
  その通りなのですが、そのままの感想を言うのでは、読者の方には「そうですねー」   
   で終わってしまいます。
コスモスや弥生土器掘る箆使ひ

星飛ぶや陶のブローチ星型に            薫子
 パソコンに銀漢のごと文字流れ
 にわとりを放ち茶店の萩白し
    <にわとりを放ちし茶店萩の花>

流れ星確かめたいこと多きかな            天花
銀河澄む母の一生つつましく

流星や宇宙への旅始まりぬ            満子
 地の底ゆ沸き上がるがに蝉時雨
 湖水への旅の始まる今朝の秋
   「湖水への」というのが、単なる湖への旅とは思えないのですが…。

流れ星大地に劣化ウラン弾               章司
 望の月香月泰男とシベリアと
    いささか季語が動くかと。


冴え冴えと 照る月にデジカメを 向けてみる  河彦
亡き母に思いを重ね彼岸花

 流れ星なぜに想いの残るやら           二穂
北富士や裳を広たげるすすき原


流星や地上は葛藤ばかりなり             山野いぶき
そんなにも悲しむ勿れと秋の風
 知り合いの届けてくれた黒葡萄

 流星や 針穴のごと テロ特措        花子
   中七もう少し頑張ってみましょう。
絵手紙に 艶ある柿の 送られる
かの世から 不意の花束 曼珠沙華
   曼珠沙華というのは本当に不思議な花ですね。

流れ星落ちたる辺り妻女山              紫微
 青空に赤く透きゐる真弓の実
  中七「赤く」を再考。
名月や竹馬の友の通夜の席
   つらさ、切なさがしみじみと伝わります。

 星流る誰の知らせか露天風呂             有楽
茂吉館後は蔵王霧襖
帰り路また逢いそうな花野かな
   何となくふわりとした情感が伝わります。

もてなしの流れ星あり奥秩父              萬坊
瓢箪のぶらり世間にぶらさがり
   確り書かれていますが、類想あり。
 寄付の札くぐり大蛇の秋祭   (おろち)
   「大蛇の」がもう少し。長崎くんちなどは想像出来ますが…。

 秋簾通す陽射しを迎え入れ               美原子
見えぬもの見えた一瞬流れ星
 遠藤に案山子立ててコンテスト
   「遠藤に」?
流れ星飛んで父の死を知りぬ              みどり
  娘なればこその思いでしょう。
マスカット含みて今日は佳き日かと
 憂きことの電話の後に小豆煮る
   <憂きことの電話でありし小豆煮る>
手ひかれし母のぬくもり流れ星             弘子
 献盃を君受けしかも酔芙蓉
   「献杯」を受けたのは死者かと。「かも」はいささか不分明。
    <献杯を君受けたまへ酔芙蓉>でしょうか。
虫時雨胸のつかへの消へてをり

 新蕎麦やにんまりとして新総理                 龍子
     「にんまり」は新総理の表情にぴったり!ですね。
駆けつけて行けぬ遠さや秋さびし
 流星やピンクの花束持ち呉れし
     季語、「流星」でない方が、いい句になるかと。

政変か流星走す二つ三つ                さかもとひろし
夜空澄む金印の島に流星
   <夜空澄む流星の島流れ星>と。「に」は一句を小さくしてしまいます。
ビートルの往きし航路に星の飛ぶ
   <ビートルの往きし航路や星の飛ぶ>

死を賭すは貫徹なりと星が飛ぶ              悠々

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