道場主今月の一言

感傷には常に何らかの虚栄がある。」
三木清(哲学者)

銀座俳句道場 道場試合第60回決着!!  

3月の兼題は 「風光る」、あと2題は自由でした

         (谷子)

 
    美しく清艶です。風に揺れるかざり羽が見えます。
  洗われるのが「船」であることが、一句を大きく元気にしています。
 

【入 選】

 故郷の我が家の跡や風光る           正己
よく笑ふ手話の二人や風光る          洋光
遠野火やふるさとの名の消えてゆく       よしこ

 

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)

今月の作品
水温む子等の作れる水車            正己
 せせらぎやうぶげ光りて猫柳

餌台をめぐる争い風光る            薫子
 小指ほどの処方目薬竜の玉
    中七までは結構です。季語、再考を。「風光る」でもよろしいかと。
 煤竹の篭に一枝利休の忌
    何の一枝なのかを。この場合、季語が重なってもよろしいです。

三輪車追ふ小犬あり風光る           花子
グランドに出番を待つ子風光る
 腰ベルト少し戻して卒業

 風光る川辺に有象無象かな           傘汀
 春宵や桂林出づるちみもう魎
 大鴉雀がくれを睥睨す
   今月はいささか言葉に書かされているというか、言葉ばかりが走り過ぎています。

風光る曾孫の靴や初歩き               瞳夢
 旅の日の全容見せて弥生富士
ひとり居の食べ余したる夏みかん
   夏みかん、文旦…一人には大きすぎますね。

アルプスの山並みはるか風光る           竹雄
  舞姫のイナバウアーや彼岸成る
   「悲願」と「彼岸」と重ねたのでしょうか?
  空と海彩り淡く風光る

  五万屯横浜港に風光る              有楽
   〈五万噸の船の停泊風光る〉と。
  奥州路山笑わずに梅白し
  ひとひらが九段の花と知りにけり
    「が」か「を」か。

風光る十年ぶりの庵にきて             方江
 沈丁の匂い深めて寺静か
 椿落つ苔やわらかにふくらみて     
 
菜の花や海までつづく空明し            もとこ
 辛夷咲く空はいよよに空の色
なるようになると春雷二つ三つ

風光る雲一つない青空に           山野いぶき
 故郷に降り立つ我に山笑う
 白木蓮空の青さに届きそう    

桜時娘と待ち合はす赤い橋              天花
永き日や歓声上がる体育館
 風光る海へ真っ直ぐ続く道

 梵字石風化のうすれ風光る               あゆ
   〈風光る風化のしるき梵字石〉と。
初午や娘のままの女厄      
 朽ち株に残りし榾か雁帰る

 花の下 色とりどりの 傘の列            河彦 
満月や 桜のつぼみ 下に見て
 風光る 窓開け放ち 二人きり

湘南の海の青さや風眩し               満子
 群青の空ひとりじめ辛夷咲く
きのふよりけふの鶯長けてをり

 春障子日はバビロンに昇るころ            美沙
     いささか距離感があり過ぎます。「春障子」を再考。
 廃駅の夢を見ている蕗の薹
風光る雲崗石仏父に似て

 く子について駈ける子風光る            萬坊
市町村合併寿ぐ春の潮
踝(くるぶし)に丸き流木春の波

 藩祖の廟頂に置き彼岸道               洋光
縦縞のゆるぶ天気図クロッカス

両の手を広げて稚や風光る               紫微
竹の秋風も遊びて露天の湯
年毎に招かざる客よなぐもり

風光るいつせいにボート滑りだし            だりあ 
 逡巡や黒わびすけの蘂細き
住職はお留守ですよと花馬酔木

 鉄蓋に雨水とあり風光る                水の部屋
花冷えや子より届く脳ドリル
    〈花冷えや子より届きし脳ドリル〉と。
 囀りや蛇口の乾ぶ外水道
 
 シート敷く手際の慣れし花見酒        美原子
 古民家を通りぬけしや春の風

孫曰く金よりこころ風光る               門次郎
覗見る新聞記事や花便り
 桜祭四十度の酒一気
   〈四十度の酒を一気や花の下〉と。

初蝶の真すぐ渡る鴎外橋               さかもとひろし
 夕月や菜の花映る琵琶湖行く
朝未き初蝶一つ岡城跡
             
 風ひかる畦行く人の増えてきて              よしこ
思ひ出せぬ人の名前や花げんげ

 万蕾の梅より透けて茅渟海                 龍子
風光る埋め立て地てふ滑走路
 春の昼欠伸を殺す仁王像

 輸入家具 表参道 風光る         霞倭文
 春の朝子の帰国待ち蒲団干す
静香、王 酔った日本に 桜咲く
    よき春の記録になりました。

鳩影の伸びつ縮みつ春の午後                章司
 朧夜の銀座を芝居はねてより
     〈朧夜の銀座や芝居はねてより〉と。 

 風光る生徒らまだ来ぬ時計台            意久子
      生徒が時計台まで上ってくるのか?と思ってしまいます。「風光る中の時計台」がしっかり書けるといいですね。
 春休みオムレツ三皿大、中、小
 門送り読経の僧や春の雪

哲平展急ぐ砂利道風光る           みどり
 さくらさくら夜空に盛り友は酔う
オリーブの木のスプーン買う菜種梅雨

中空に撓ふ釣竿風光る       弘子
 過去背負ひあっけらかんの花巡り
古書店に移転の知らせ花の雨

風光るさよならねと久世は逝く         悠々

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