道場主今月の一言

「男はすべて重りかに口数多からざるぞよき。」
(樋口一葉)

銀座俳句道場 道場試合第46回決着!!  

1月の兼題は 「初春」「初夢」「お年玉」 で した。

 大遅延、唯々平伏。お詫び申し上げます。
二月に入って、風邪を二度も引き込んで、万歳状態でした。
黙って我慢して下さった道場主へ感謝申しあげ、重ねてお詫び申します。

   (谷子)

 

 「五年目への」にこめられた思い。
 静かな雨です。銀座本来の風情を感じさせます。
 いいお年玉ですね。

【入 選】

人初春やすずめに千切るパンの耳   弘子

千代紙で折る箸袋今日の春     天花

初春や男一人の旅日記       のぼる
初夢や逢はぬが華ということも         意久子
お年玉父の知らない貯金箱          有楽
 

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)

○初春のとんがっている雲の先            だりあ
   「とんがり」に見つけた初春。
 初春や雫の光るだけ光る
 初春や月光やどる枝の先

○初春の雪見障子の白さかな              京羅坊
 初夢や富士の高嶺の大きかり
   「初春」にした方が、一句が伸びやかになります。
 それぞれに一言添へしお年玉

○仏壇に用意をしたるお年玉        清七  
   何でも預かる「お仏壇」。暮しの中の「仏壇」の存在感が
   正月の景の中で、よく切り取られています。

 初夢や中村福助の艶姿博多座で見る
   いささか長過ぎます。「中村」「艶姿」削れましょう。

 身ほとりの贅そぎ落し今朝の春      傘汀
○初夢の戦友(とも)みな日の丸飛行服
○孫たちにお年玉包むそんな幸
   前の句に続くと、この「幸」の深さがより深く思われます。

○初春や爆笑の外ひとりいる                          瞳夢
   つい目出度くなりがちの「初春」。一味違った一句です。
 腕白の神妙にいるお年玉
 校庭のハンカチ落とし夢初め

 初夢で 会いたし1000の風の人           花子
 初春や 半幅帯に 苦戦して
○お年玉 やけに素直な 隣の子
    お返事も今日は素直で。いつもこの調子だとよいのですが。

○初春や今年もやっと辿り着き              正己
    年々に一年が早く感じられる、と言う方もあれば、「ようやくに」との
    思いを抱く方もありましょう。何はともあれ、の目出度さ。

 初夢やセンター試験も近くなり
 お年玉昭和の初めも遠くなり

 初春や家族揃いてハイチーズ             竹雄
○逝きし君初夢の中に生きている
 乾杯を真似る幼にお年玉

○握手せしひとはベッカム初寝覚                    章司
   中年女性では「ヨン様」でしょうか。此処は、様々に置き換えられましょう。
 年玉やなじみの店の化粧箱

○初春はウィーンフィル独り見る傲り                 有楽
 初夢や地震台風大津波

 初春の爪ももいろの目覚めかな               遥
○年新た薄墨でかくいろはうた
 お年玉航空便で届きけり

 初春や着飾る子等の街になく               意久子
 お年玉小太りの母あげるひと 

 初春のふるさとの陽のまぶしけり         山野いぶき
    「まぶしかり」と。
 初夢や明けて現実押し寄せる
○お年玉十九の姪の破顔かな
                        
○初春を電波時計の告げにけり               とみゐ
○初夢の話しようか止めとくか
 買ひにけり鉱石ラジオお年玉
    年玉で買ひたる鉱石ラヂオかな

 初夢や父の袴の浅葱色                  水の部屋   
 明の春ジェットタオルのはじく水
    ジェットタオルってなんでしょうか?
○初春へ古希の背筋を伸ばしけり

○新春の日矢東雲を差し通し                洋光   
   「初春」の方が、ハ行音が続いて、輝きが増します。
 初夢はないしょないしょと兄妹
 お年玉袋の数を競ひをり

○初春や幼きピアノ聞く電話          吐詩朗
   初電話での初弾ですね。孫なればこそ。
○初夢の薄れつ妻の寝息かな
 長幼のちがふ反応お年玉

○初春や堅きはな緒の下駄の音                萬坊 
 初夢の続きうつうつ二日酔い
 すずめ二羽来ると思へずお年玉
    何だか不思議な一句ですね。すずめのお宿の正直じいさん、を思いました。     

○機は白き尾を引き初春の空にあり              秋吉景子
 初釜や御銘は歩みときめている
   初釜や御銘は「歩み」ときめており
   「や」をつかっているので、「きめている」の口語は避けましょう。

 五円入り孫が差出すお年玉

 佐賀平野初夢増やす車窓かな                さかもとひろし
    「初夢を増やす」というのがどういうことなのか?
    「初夢は車窓を過る佐賀平野」なのか?

 リストラや昨年と比べるお年玉
 初夢は喰わぬという獏どんな夢
    
○初春や余生煌く道ありて              方江
 子に言えぬ初夢を見て浮かれおり
   「浮かれおり」をもう一工夫すると。
    「子に言えぬ初夢を見し機嫌かな」

 お年玉あったらいいな大人にも

○お年玉子から賜る齢かな              もとこ
 年の酒ドクターストップ明日から
○初夢やこれも忘れてしまいけり

 越えゆかむ 初春の旅は 山また山          河彦
 還暦の 初春の決意 パソコンに打つ
○初春や 猫と寿ぐ 独り身にして
    「初春を独り身にして猫と寿(ほ)ぐ」

○従兄弟どち児の駆け回る家の春            あゆ
 うつらうつら帰る子を待つ初枕    
 兄妹その差微妙にお年玉 

○初春や十年日記の十年目         天花
○初春や苑ゆく母の車椅子     
 
 お年玉楽しみに来る幼き子          堤二青  
 何時まで欲しき顔するお年玉
   「何歳(いくつ)まで欲しき顔するお年玉」
 初夢や腰痛既に癒えてをり
   いかに大変かが察せられます。お大事に。

○初夢の宇宙遊泳覚めきれず          のぼる
 年玉や年齢順に並ばせて

○初春の形見の時計動きをり          今井伊佐夫
   「初春や形見の時計動きをり」
○初夢のしかと生家の間取りかな
 お年玉もらう齢となりしかな
  
 暗き土間初春祝う荒神様            美原子
○初夢の飛び乗る電車どこへ行く
 玄関の靴を数えてお年玉

 初夢や甲馳がどうにも掛からない          陽湖
 養母と知る天与の瞳お年玉
   「天与」をもう少し推敲される方がよいでしょう。

 初春に遺稿集備え熱き白湯           みどり
 宝船の絵敷き忘れるおぼろ夢
○指先に降るひかり天のお年玉

○友からの初夢という菓子盆手前         弘子
 年玉のアルゲリッチやモーツァルト
   音楽漬けのよき初春。  

○青洟のぬれし手にもやお年玉          あきのり
 初夢を見しあとにはか聖書かな
 日の春や能面の顔にやさしさを
    「顔」「やさしさを」を推敲。

○初春の 言祝ぎ飛び交ふ 訛かな   姥懐        
 初夢や 叶はば褒美 たんとやろ
 嬰児の 分まで足して お年玉

○初夢を見ることもなし齢かな    二穂
    「初夢を見しこと忘る齢かな」
 初春の音なき雪の朝かな
 棟梁のいつも通りのお年玉

○米寿傘寿姉と迎へし門の春        紫微
    何よりも先ずは目出度く。 
 初夢の正夢なるや今朝の富士
 通知表出し渋る子にお年玉
                    
○笑う子も泣く子も賜うお年玉      竜子
 初春や路地遊びの子とんと見ず
○初夢のふっと笑ひて熟睡の子

○旅の春富士見る老母(はは)を見守って       美沙
   やさしい一句です。
 初夢の続きや欅に星の降る

 はつはるやみそひともじのひびきあり    悠々

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