道場主今月の一言

「武士道に於いて分別出来れば、はや後(おく)るるなり」 
(「葉隠」)

銀座俳句道場 道場試合第39回決着!!  

6月の兼題は  「 梅雨寒」 「夏の風邪」 「父の日」 でした。

 書中お見舞い申し上げます。
今回は「父の日」が上位を占めました。
思いが篭っている句が多かったからでしょう。
それと、一字を考えて書くようになられたのが、伝わってきて、嬉しい限りでした。
暑さの中、お大切に。

   (谷子)

 

 「豪雨を」の「を」と「二つ」が、いいですね。
  イイナーこの句。男の含羞です。強くあれと言われ続け、思い続ける男のため息です。でも頑張って!
 楽しい一句。ただ楽しいだけでなく、切なさを含んだ懐旧の情が、
     一句をしっかりと立たせています。

【入 選】

父の日や障害の子を洗ひをり     章司
重たい一句です。「生きる」ということの重さを考えます。

いつまでも若き遺影に父の日来(く)  美沙
切ない一句です。「に」が見事に働いています。

鳥籠の鳥の饒舌夏の風邪      水の部屋
夏風邪の感覚を上手く伝えます。

梅雨寒やいよよ無口となる介護      花子
なかなか重い一句でした。
年金と云ふ禄食みて梅雨寒し        竜子
いささかの自嘲、というより、この句の「嫌味」が判る政治家は居るでしょうか。
父の日や父在る如く酒を買ふ       傘汀
「在るごとく」というのはよく使われるので類想句あるかと思いますが…。怖がらずに書いていきましょう。
 

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)

梅雨寒や今晩なにをたべようか          京羅坊
 冷蔵庫氷枕の夏の風邪

 梅雨寒や電波で子守り女児育つ        竹雄
エアコンの所為にしている夏の風邪
 父の日や親の資格を自問する

 梅雨寒や国民の眼年金法           清七
 リハビリに眉ひいている夏の風邪
父の日や黄泉少しだけ覗きけり
   なかなか、深い一句でした。

 梅雨寒帰らぬ人の拉致の浜         有楽
 夏風邪を背負いてやどる蜀の道
おのが背はいかがなりしや父の日
   子供は親の背を見て育つ、の言葉をしみじみと噛み締めて…。
   下五が破調ですが、なまじに整えない方がよいでしょう。いずれ、ご自分で。

家長権 譲られ十年 梅雨寒し                   瞳夢
 父の日や選び抜きたる大吟醸
 夏の風邪ドミノとなりて終わりけり

 父の日や 横座におりし 主おらず            花子
    横座はかか座。いくら子供がやさしくても。寂しさが伝わります。
 夏風邪の 女の目元に 遊ばされ
    「遊ばされ」を再考。

父の日を祝ひ祝はれ四世代                洋光
梅雨寒の人間ドック待合室
碁敵に勝ち譲られし夏の風邪
   今回の作品、きちんと書かれていますが、いささか「軽い」です。

梅雨寒を確かめ会うて二人かな            もとこ
   人懐かしさ、と共に、「二人」の確認。
 梅雨寒や留守番電話の切り口上
夏の風邪思い当たりし事ありぬ

ちまちまと妻パツチワーク梅雨寒し          傘汀
    「妻ちまちまとパッチワークや梅雨寒し」
     「俳句」の575にこだわるより、575を基調としたリズムを大切に。

 氷菓子なめたしならず夏の風邪

恋に似てぐすぐすとなる夏の風邪           方江
    「夏風邪は恋のごときや」とか「恋に似たりし夏の風邪」とか、
     もう一押し考えてみてください。

 父の日の母あれば子の満ち足りて
     母としては「この通りでしょ」という感じでしょうが、
     この句を読んだ、世のお父さんは、改めてショックでしょうねー。
     又、飲みに行ったりして。
     男性側からの一句だと、オモシロイのですが。

梅雨寒や山鳩の声響きけり

日本酒の復刻版の父の日よ              だりあ
 父の日のふるさと遠くありにけり
敬礼の古りたる写真父の日や

 梅雨寒や出しっ放しが幸し              とみい
     これは「川柳」秀逸、です。
 夏の風邪自己責任と言はれけり

 梅雨寒や 軽鴨の雛また 姿消し           泥臥
ふと聞きし 呟き重い 梅雨寒
   「ふと聞きし呟き重き梅雨の冷え」
楽しみの 客は夏風邪 早寝して
 父の日は明日とせまりし 貯金箱

夏風邪やゴボゴボ動く水枕             竜子
旅最中父の日忘れて終ひけり

 梅雨寒や庭の仕事の背筋より            吐詩朗
 なんとなく喉にささりし夏の風邪
父の日やアロハ贈られ羽化気分
              
 川底へ曳く力ありファーザーズ・デイー   水の部屋 
梅雨冷や谷中に覗く鼈甲屋

 何とな く 置薬のむ夏の風邪         あゆ
梅雨寒 し家々昼の灯を深 く 

父の日や酢のあへ物に咳き込みて          萬坊
 カーテンの影ゆらゆらと夏の風邪
梅雨寒の路地の奥より「にさんがろく」
   「路地の奥」で、塾など行かぬ家での勉強風景が浮びます。
   お母さんの側で、声を張り上げているのでしょうか。


梅雨寒の勧誘電話知己のごと                      章司 
 大皿のキムチおかはり夏の風邪
父の日の父臥せしまま暮れゆけり
スタンプの掠れる半券ファーザーズ・デイ      天花
   「掠れる」に哀歓がこもります。
 父の日や見舞い帰りの喫茶店
目印は赤い橋なり梅雨寒し

梅雨寒や ボラが川面に はねる街          河彦
   「街」で成功しました。
 梅雨寒に ネズミの声も 友として
父の日は 米寿の父を 思いつつ

父の日もそろりそろりと散歩かな        山野いぶき
    お父さん頑張って!ですね。
 梅雨寒や電気ヒーターつける父
 夏の風邪寝込めぬ母は家事に立つ

 夏の風邪祖母の梅干年古りて   美沙
梅雨寒や燭をこぼして聖画像
   「梅雨寒の」と。
 
空白といふべき日なり梅雨寒し          のぼる
 夏の風邪言葉少なく別れけり
父の日やデジタル式の家電購ふ

 梅雨寒の 梅酒の壜の 結露かな          姥懐 
 夏の風邪 妻の小言の 大あくび
父の日や 魁夷の馬の 絵はがき来 
   「魁夷の馬の絵はがき」がお上手。   

梅雨寒の町にうるさき街宣車            二穂
夏の風邪気晴らしに買う宝くじ
   夏風邪の長引く感じがよく出ました。 
 父の日の百合豊麗に蘂をたれ

 父の日に父と呼びし日十二年            意久子
   「父の日や」と。
 めちゃくちゃの愛の告白夏の風
走梅雨退くこと知らぬ父と娘
   「退くことを知らぬ父と娘走り梅雨」

梅雨寒に湯煙り匂う石の道             陽湖
夏の風邪に文下されし母卒寿
   「下されし」がなんとも言えぬ味わいです。
 ときめきも諸諸も凪ぎ古希の父の日
   
      
梅雨寒や寺への小径苔濡れて            正己
   「梅雨寒や寺への径の苔濡れて」
   「苔」も実は季語なのですが…。実景ですから、このままに。

 あう人も夏の風邪かや咳薬
 父の日や霊場の道一人往く

父の日に父の写真に髭を描く            みどり
   「父の日の父の写真に髭を描く」
 梅雨寒にオニオンスープ煮つめおり
夏の風邪棄てる手紙をまた束ね

 父の日や父知らぬ子は還暦とや           弘子
   父上は戦死でしょうか。今年は、「戦時最後の子」(厳密には来年夏まで)が
   還暦です。来年からは「戦後の子」が還暦。

梅雨寒や川鵜の岩を動かざる
 夏の風邪吊るしたままのワンピース

 夏かぜで聞こゆる井戸端会議かな                あきのり
戦雲の急なるイラク梅雨曇
いまさらに顔を崩せぬ父の日よ

夏風邪の犯人は俺カラス鳴く           さかもとひろし
    鴉がこんなところで出てこようとは。面白い一句。
 夏風邪をもらって微妙恋予感
梅雨寒に近江八景眺めたり

重き荷としみじみ知りし父の日哉          悠々

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