道場主今月の一言

「黙っていても、しゃべっても同じことだが、心に窮屈なところがあってはつまらない。平気にならなければいけない。」 (夏目 漱石)

銀座俳句道場 道場試合第34回決着!!  

1月の兼題は「 元旦」 「冬の川」 「外套」 でした。

 北九州は、大寒前後の大雪、立春の日、そして6日も牡丹雪、と(向いのマンションが見えなくなるほど、舞ったりしていました)、珍しく「雪」を楽しんでおります。
嫌いな方には申し訳ないのですが、雪となると俄然元気になって、雪の中を活き活きと出歩いて、仕事をどんどんと片付けます。(雪が止むと、その分のツケが戻ってくるのですが)。
  とはいえ、立春を過ぎました。ご清吟を。    (谷子)

 

 寒風の中入ったミルクスタンド。きっと注文はホットミルク。
  「外套脱ぐほどではない」に、駅のホームなどのミルクスタンドの佇まいと、悴んだ作者が浮かぶ。
  風景画をみるような一句である。「日の当たる」と一句に息を通わせている。
 「学のキャンパス。迷彩の外套を着た学生が、野良猫と並んで日向ぼっこであろうか。猫と並んだ若者の姿に、作者はその学生の 孤独とやさしさをみたのであろう。

【入 選】

大手門より唐突に緋のコート         水の部屋

元旦の風やはらかく日章旗          吐詩朗

初暁や母の着物に赤少し           晴子

重たからう父よあの羅紗外套は        章司

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)

歳旦の都鄙どこまでも晴れ渡る         瞳夢
 濯ぎ場の踏石濡らす冬の川
   悪くないのですが、中七の「濡らす」を考えてみてください。もっとしっかりと大きな句になるでしょう。
 外套の掛かりし壁やセピア色
   〈セピア色の外套いまだ掛かりいて〉などとなると、ドラマが生まれますが。

 元旦やすこしの運こひねがふ          中土手
   〈元旦や少しの運を乞ひ願ひ〉
氾濫を昔話に冬の川

元旦や庭に箒の目のありて          花子
 冬の川川岸を訪うは風ばかり
   〈冬の川岸訪うは風ばかり〉
 外套をおもわず墓標に被せおり

元旦や下駄音響く太鼓橋           正己
白樺の影も凍りて冬の川
 外套を脱いで汗する石畳

 元旦や天気静寂富士筑波           とみい
 冬の川草野球にもオフのあり
    河川敷なのでしょうが、「冬の川」より「冬木の芽」の方がいいでしょう。
休みたき気持ちに着せる外套や

2004年一歩一歩を踏みしめて         意久子
   「二〇〇四年」と。
 喰積を荒らし去りゆく次女一家
  笑ってしまいました。「マアマア なんてこと」と思いつつ、幸せですね。
 外套の蔭に母待つ終電車
   「外套の蔭」というと、父親の外套の中などと考えます。自分が外套を
   着込んでいるのならば、再考を。

戦中の青春遥か年賀状 

元旦の身内(みぬち)貫く日の光        洋光
外套を脱いでいつもの顔となる 
    きちんと書かれています。今年の課題は、この上に
   「自分の句」の匂いをどう加えていくか。がんばってください。

   

冬の川よどみ躓きまたよどむ          吐詩朗
燦々の雪嶺仰ぎ外套脱ぐ

 点眼の苦味覚える年の朝
 冬コート飛行機雲の崩れだす       晴子
   「冬コート」とまでいわずとも、と思います。この句材面白いです。

 元旦の孫はなかなか口達者                 竜子
 鳥たちの踝濡らす冬の川
 外套の背中を並べコップ酒
外套の復員兵の父在りし
    重たい重たい外套ですね。

 あなうれし本還となる元旦        もとこ
  おめでとう存じます!私も、1月2日に本卦還り致しました。
 冬川の逸れ鳥らし細き足
 相容れぬ飛行機雲と冬の川

 息吐いて眼鏡のくもる冬の川        水の部屋 
 元旦や房総の空抜けてをり


 柳箸おくしつはこぶイラクに派兵      泥臥
冬の旅風鳴る川の果てはまだ
古外套父と聴きたる流氷のうた

 元旦の参道で会い「はい・チーズ!」     陽湖
 惟盛の伝説を秘め冬の川
ツイードの外套亡父は明治人

 拝む手の指よりあふるる元朝の日           あきのり
 満月を写しさしいれ冬の川
 外套のパイプのかほりシネマかな
     「外套にパイプのかほりシネマかな」

元旦や都会の空の青いこと       山野いぶき
 元旦や女性の車掌颯爽と
 乗客のそれぞれの元旦想いけり
   「乗り合わせいてそれぞれのお正月」でしょうか。

 日をありつたけ弾きかへして冬の川       だりあ
   「ありったけの日を弾きいれ冬の川」
冬の川たどりし果ての大落暉
灯明の炎まつすぐお元日

 元旦や掛け軸の申白き霏霏      清七
  「白き霏霏」が解りません。「狒狒」でしょうか?
 「申」と言っているので、雪でしょうか。霏霏だけでは雪は伝わりません。
  「元旦の掛け軸の申霏霏と雪」のように。この場合「元旦」   
   は特別な一日なので、季語の重なりを気になさる必要はありません。

白き鳥に目を遊ばせて冬の川
外套を被りで二人の下校生

元旦や申の絵柄のわれに似て                 のぼる
 舫ひ舟みな富士に向き冬の川                
   「舟」だけで、「川」は解りますから、「舫い舟みな富士に向き大旦(又は初茜など)」と。
外套に虫食いのあり寒の入
   「外套」「寒の入り」は清七さんのところで説明のように、このままでも結構です。

元旦や空ばかり見て国憂ふ                   傘汀
 外套着てたのか銀座の柳青いの
流すもの無く音を断つ冬の川

 大気澄み希望と勇気冬の川                 みどり
 元旦にひょいと賽銭拾うひと
外套の内ポケットに夢の詩

 見舞終え仰ぐオリオン冬の川                 弘子
    「仰ぐ」と言って、急に「冬の川」と視線が下がります。
元旦や毘沙門天の目の潤み
外套のほころび知らず客となる

元旦や大吉と出る古希若し                  方江
流るるも見えず流るる冬の川
 マント着た陽気な父を思い出す

偕老の合掌揃ふお元日       姥懐  
 冬の川身丈の程の散歩道
外套の襟立てリストラ躱(かわ)しけり

 外套の襟たて友と初詣            竹雄  
 元旦や拝む姿に光りあり
釣り人の一人も無くて冬の川 
  
 元旦や身代わり猿も新しく         河彦
 元旦の猿沢の鳩丸々と(奈良で)
佃へと冬の川越え帰る夜
    
 元旦や白き半月残りをり            二穂
 生きものの気配は消えて冬の川
細身なる古外套の捨てがたき

元旦や老いの二人に恙なく           たづ 
  何よりのめでたさです。
冬の川羽毛吹かるる鷺一羽
外套とて当世はやりの軽き物

 群れ鳥の行き交ふ想ひ冬の川          章司
元旦の凶の御神籤縛りけり
元旦や雪国よりの地酒便
     
元旦の空ひたすらに水の色           美沙
一週の始まる電車冬河越ゆ
 みちのくの冬川光る日母を訪はな
   「冬川光る日みちのくの母訪はな」と。

 元旦や産毛にほんのり鹿の子結い        さと子
 どじょっこよ師の唄聴こゆ冬の川
  小学校の先生が歌われた声でしょう。「どじょっことろ先生の声冬の川」でしょうか。「師」は重すぎます。
 娘には新しき外套セピア色
   セピア色というと、古ぼけた、というイメージなのに、娘は…というのでしょうか。

 シスレーの緑の濃い冬の川           さかもとひろし
 外套着別人の顔出発す
冬川の遠き一景友偲ぶ

 外套を吊るして父の一周忌            よし子
丘のぼり行けば開けてお元日
   静かですが、しっかりと明るい一句です。 
冬の川光あつめるところあり

元旦や母の道行着る歳に              美原子
 外套を脱がずに話す古き家
 古時計年季の入ったトレンチコート
   時計、コートと、身に付けるものを、一句の中で重ねない方がよいでしょう。

 元旦や平成16年になりにけり            悠々
   「平成も十六年やお元日」
   「けり」でやるか、「や」でやるかですが。

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