道場主今月の一言

(不易流行)
易わらないもの、かえてはいけないものと、かえていかなければいけないものの両方が大事」 (松尾 芭蕉)

銀座俳句道場 道場試合第33回決着!!  

12月の兼題は 「12月」 「雪」 「重ね着」 でした。

 頌春
 めでたく新年を迎えられたことと存じます。
 めでたいばかりでなく、さまざま案じられることも進行中。
 昨夜、俳句の仲間からファックスが届きました。
 「大陸で敗戦を迎え、九歳で婦女子を守る役割をし、銃の冷たさを知り、眼前でその銃が人を撃ち殺す場面を体験した人間として」今の 政府の決定に、冷静に俳句を作ることができなくなった、と書いてありました。
 「暗闇で銃声が聞こえている間は相手の位置が察知可能で然程の恐怖はありませんが、
銃声が途切れると相手の位置がわからず、次の銃声が眼前で起こる可能性も高く恐怖心が湧き出し、鼓動が他人に聞こえるのではないかと思われるほど強くなります。しかしそんな状態に置かれても、ふっとアカシアの花の香を感じるのも人間の感性でしょうか。」
とありました。
 九歳の子供の「西部戦線異状無し」に、胸を締め付けられる思いでした。
 「派遣しなければ、日本は世界の物笑い」と語った評論家の言葉に、台所で茶碗を洗っていた私は「笑ってもらおうじゃないの」と怒鳴りました。「今、笑われる勇気」という言葉が、政治家から出ないものでしょうか。
  熱い味噌汁をすすり貴方居ない
  母の胸に英霊ふるへをり鉄路
というような句を書きたくも読みたくもありません。
 俳句の短さは平和でない場合に機能する、と言われます。確かに一理あります。
戦地での作品、バルカン半島で「HAIKU」を多くの詩人が書いたのも、そのような背景がありましょうし、心打つ句が生まれてもいます。日常時のなかでの良い句というのは、そうならぬようとの、祈りだと思います。どうして人間は学習しないのでしょうねー。と本気でイカリ、祈る去年今年です。    (谷子)

 

 父の姿、その父への作者の思いがよく伝わります。
  「油膜」が多くのこと、多くの思いを伝え、迫ってきます。感情を書かぬことが、複雑な感情を想像させるのです。
 「重ね着」という齢を感じさせる季語。しかし、だからこそ「雲早し」に、世情への鋭敏な感性を受けるのは、こちらの読みすぎではないでしょう。

【入 選】

忘れゐることに癒され十二月    もとこ

重ね着を重ねて脱ぎて見舞いけり   中土手

初雪や恋の芝居のはねし道   章司

十二月てきぱき動く花時計        竜子

重ね着を肯ひ合へる齢かな    洋光

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)

大滝にしめ縄白き12月           正己
 雪乗せて機関車汗のターミナル

 十二月男言葉に戻りおり     清七
 雪山やぽっくりあの世へ寝返りす
重ね着や空席多き連絡船

 重ね着の子は懐手 草野球            瞳夢
  「重ね着」と「懐手」と季語が重なります。
ふいとうや 四人の雑魚寝雪の宿
  「ふいとうや」は「吹いとうや」でしょうか?雪山を思います。
しがらみの解けてぶらりと 12月
  「12月」は「十二月」と。

故意・過失・殺人・未遂・十二月                中土手
 うらうらと帰郷の友の雪だより 

出掛けしが戻り重ね着集金日                  意久子
   「出掛けしが戻り」が一句を活き活きとさせています。
そうじ終え「甘味御前」や十二月 
 「おばあちゃん見て」目玉筆の穂雪だるま
    雪だるまの目玉が筆の穂?子供の声が聞こえそうです。

 きな臭きまま世は十二月となり         とみい
重ね着や散髪あとの頭の軽さ
休むぞと決まれば降れや大雪に 
   私も雪大好きです。雪が降ると元気になります。休まなくても「雪降れ降れ」です。

 神様へ報告をする十二月            だりあ
   何の報告か、もう少し書き込むことです。
 十二月雲のゆくへを追ふときも
 天上の花かと思ふ十二月
   「雪」そのものは書かれていません。

重ね着や鳥の滑空するみそら           章司
 十二月何処も鳩のゐない村
   「十二月何処(どこ)にも鳩のゐない村」
 雪はげし夜汽車は宙を驀進す


重ね着てすこし足りたる思ひかな    吐詩朗
 樹を仰ぎ開けたる口の雪明り

雪の日のコーラン響く異人坂                        竜子
重ね着て夜遊びの猫叱りをり

重ね着の胸内に隠す老う不安     もとこ
   「重ね着や老いへの不安胸内に」
 還暦の重ね着赤いセーターも

 雪囲い暗がりにしんと薬師佛             泥臥
重ね着を一枚ずつ剥ぐ鍋の湯気
 師走とゆう匂いのしない十二月
  面白い一句です。もう少し踏み込んで書くとよくなるでしょう。

 はだか木の並木も絵なり十二月            竹雄     
 お祓いの雪とおもえば紙吹雪
 耐性のなくて重ね着きぶくれて
  「耐性のなくて」が面白いです。「重ね着きぶくれて」は重なり過ぎ。
  「耐性のなくてと言うて着膨れて」でしょうか。


 12月 手帳二冊を 持ち歩き             葉笑
 12月 余裕で賀状の 歳になり
12月 孫の来る日を 指を折る
   「十二月孫の来る日を指折りて」

 十二月正義を謳ふ戦熄まず                洋光
雪の積むほかに音なし座禅堂


 十二月 夢のつづきを 送り出す            花子    
 追ふごとく 先輩訃報 十二月
   何を追うのかを。
職辞すと 友告げに来た 十二月
  「職辞すと告げに来し友十二月」

 12月テロに怯えつつ里帰り              さと子   
 重ね着に振り子となりぬ瞳かな
   小さい子でしょうか。一寸断定しにくいですね。
 一弦はやがて重なり由布の雪
   一弦琴なのか、何か別の弦楽器なのか?

逝きし娘の誕生日来る十二月              陽湖
ループ橋雪のかなたに灯りおり
 重ね着て寝覚め待つ薄茶点つ
  少し材料が多いので、
  「着膨れて一人手前に薄茶点つ」と


着膨れてテレビ体操見ておりぬ             倭文子
   結構です。「良くあんなに身体が曲がるなー」なんて感心しつつ。
ジャムを練る香りの篭り外は雪
 十二月半世紀振りのうどん打つ

版画彫るいつものならい十二月             二穂
快晴の大雪山ダイヤモンドダスト
   「ダイヤモンドダスト快晴の大雪山」
 重ね着もファッションの若い人 

雪催い乗りかえ駅の絵地図かな             晴子
十二月母の歩幅に合わせをり
 雪はげし列の終わりにプラカード

常連の顔がみえない十二月                美原子
  バインダー納まりきらぬ十二月
 重ね着の降り立つ先は市が立ち
   「降り立つ先は」の「は」を再考してみてください。

 音高く軍靴のひびき十二月                 みどり
いつの世も死ぬのは兵士雪しきり  
   「いつの世も兵士には死が雪しきり」
 いざ行かん重ね着のファッションキメちゃって

救急車の行く手阻まれ十二月                 弘子
 畑土の黒グロ雪の降りしきる
重ね着はせぬと九十二歳の恩師
   ご立派!!見習いましょう。

 吐く息の白さに急ぐ十二月                  方江
   「白息」「十二月」と重なります。
 ひらがなのような沼あり雪景色
   「ひらがなのような沼」といわれても、今ひとつ想像し難いです。
重ね着や老いのペンだこ大切に

厚着して今を自在に遊びをリ                 水の部屋
 十二月ドラッグストアの幟旗
ナプキンは鶴の形や雪明り
   美しい一句です。ただ、すでにナプキンの美しさは鳥に見立ててさまざま書かれています。                    

犬もゐて消防訓練十二月                     のぼる
雪便り聞きつつ小豆南瓜食ぶ
着膨れて財布のありか失念す
   実感あり。

十二月 故郷に母は 眠りたもう                    河彦
 一周忌 雪に心を 清められ
ほろ酔いの 女と二人 雪を待つ

 束の間の夢追い落胆十二月                   あきのり
 雲払い青空割きて雪峯立つ
  「雪峯立つ真っ青な空を割き」
着ぶくれて修羅を経しかや皺の顔

 気配してドアを開ければ宵の雪        山野いぶき 
ねぼすけになんとまぶしい雪景色
   俳句はここから始まるのです。この「ワオッ」から。
 憂きことの 千鳥走りや 十二月     姥懐
 救急車 サイレン赤き雪の道
重ね着の掛け声強くなりにけり

 十二月重き歴史を刻みゆく       悠々

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