道場主今月の一言

(悟り)
悟りとは平気で死ぬことではない  平気で生きていくことだ」 (正岡子規)

銀座俳句道場 道場試合第32回決着!!  

11月の兼題は 「 北風」 「七五三」 「枯れ野」 でした。

 12月9日、「イラクへの自衛隊派遣」が告げられました。
〈戦争が廊下の奥に立ってゐた     渡邊 白泉〉
65年前のこの句を、このような状況の中で思うとは、予期していませんでした。
さまざまな意見がありましょう。
〈未亡人泣かぬと記者よまた書くか〉という佐々木巽の一句も、外交官二人の
死を前にして思います。
12月8日の翌日というこの日、小泉首相は一日だけズラシたのか、わざと続けたのか?
この「派遣」が、泥沼化の大きな引き金にならぬようと、切に願っています。    (谷子)

 

 「妻の強腰」が、北風の強さを感覚として伝えます。
   面白い一句でした。何だか大枯野で、「年をとっても男と女」と言っている感じと、その中での生きている者の体温が感じられます。
 いわゆる「すかす」テクニック。トボケタ味わいです。

【入 選】

母逝きて枯野に一人父の顔         河彦

写真館の掃き清められ七五三        弘子
   結構です。なかなか面白い着眼でした。

両の手を高くひかれて七五三        もとこ

日を溜めてやさしくなりし枯野かな      洋光

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)

カウボーイ駄々こねている七五三       瞳夢
 池の面の北風浚いの風となる
村営のバスは枯野を駆けてゆく
  楽しい発見です。まるでトトロの猫バスのよう。〈村営のバス駆けて行く枯野中〉と。

 きざはしに振り袖映えて七五三        正己
 北風や柴を背負い老婆行く
  〈北風や柴背負いたる老婆行く〉と。
 行く道の草に隠れて枯れ野かな
  〈行く道の草に隠れし枯野かな〉と。

北風や日に1本のバスを待つ      花子
  〈一本〉と。
 北風が旨み引き出すみりん干し
 大枯野母の立姿を夢に見る
  〈大枯野夢見る亡母の立姿〉でしょうか。

 千歳飴ビデオも入りし引出物        陽湖
北風の伊那谷駆ける宅急便
  「宅急便」はクロネコヤマトの固有名詞ですが、「宅配便」では速度が出ませんね。
 歩を合わせ立ち止まる月枯野鳴る

 藤蔓の太くからまる七五三         水の部屋
朝北風やレバーペースト厚く塗り
土手枯るる運河音なく雨入れて

 外人のカメラはにかむ七五三         とみい
  〈外人のカメラにはにかむ七五三〉でしょう。尚、外国人は「外人」という言葉、
  とても嫌だと言います。

 北風や戦ひ終へし野球場
掘割を抜けて枯野へ武蔵野線 
   「堀割」でしょうか。

 陶製の扁額古りし七五三                中土手
 人買いやまがまがしきまで夕枯野    

日当たりて枯野の鷺の落着かず       吐詩朗
 Vサインのいつものポーズ七五三
 母そはそは祖母ゆったりと七五三

 七五三葬儀とダブル家はずし         竹雄
 北風に向かう米英いかにせむ
   誠に誠に。とは言え、「いかにせむ日本」ですね。
道連れもなく去り逝きし枯野かな

 北馳ける少年剣士の片えくぼ           晴子
風呂の湯のあふるる朝や北の風  

 マフラーの欲しき首筋日の暮れて                 のぼる
冬霧やわれより羊歯の背の高き
  「首筋」「背」、感じ取るに敏感な肉体の感。結構です。
古き磴時雨の似合う観音寺

 子を連れし渡り援ける北の風          泥臥 
  「鳥の渡り」でしょうが、一寸解りにくいですね。
 小さき緑抱き枯野は風を呼ぶ
金襴の祝い草履はすぐ抱かれ

 北風のイラク派遣や大反対      清七
  「北風のイラク派遣や」で、北風が吹く時だから反対しているように思われてしまいます。〈北風やイラク派遣に大反対〉でしょう。
 高速道のスピード下げる枯野山

 七五三櫓袷袢纏みかん投げ      意久子
   「櫓袷袢纏」って、なんでしょう?
疎開ッ子もと来た道の枯野かな
   我が連れ合いは「最年少学童疎開児童」です。身に沁みます。
 暮れ早し帰りを待つ身風の鳴る
  〈暮れ早し帰り待つ身に風が鳴る〉

故郷は枯野でさえも懐かしく         山野いぶき
 北風に負けずに遊ぶ園児かな
寒風やバス一向に現れず

大北風や玄界灘の狂詩曲           さと子
黒牛の由々しき姿枯野かな
 忌明け待ち門前で祈る七五三
             
 北風に塊ってゆくランドセル                    竜子
                   
歩こう会歩巾まちまち枯野かな
 賽をしてあとは抱かれて七五三
   〈祓われし後は抱かれて七五三〉と。

 北風が寺の竹林なでて行く         河彦
北風に母の遺影を抱きかかえ

 枯野行く音なき風のはだかりぬ         もとこ
北風は嫌いやさしき風を待つ

 反り橋を肩車の児七五三            倭文子
北風にドロップ缶の転がり行く
赤牛の枯野を置きて牽かれ来る

北風や旅立ちの子振り向かず          方江
当てもなくゆっくり歩く枯野かな
 カメラ見てかんざしゆれる七五三

 七五三祝詞に倦みて欠伸の子          洋光
北風を連れ来てくぐる縄のれん


 お喰い初め 想ひにもはや 七五三        姥懐
北風の 後ろ歩きの 登校児
 枯野みち 往時の花に 屈まりて

名を呼びて枯野へ窓を開いたり          だりあ
枯野行く大手を振って一人なり            

 姉おとと妹そろいて七五三            二穂
 北風や遠き闇よりきたるらん
枯野にも色さまざまにありにける
                      
人までも透けて見えいし枯野かな             あきのり
ぴょんと飛び石蹴りじゃんけん七五三 
 耳伏せてもう済みしこと北風の中

北風へ譲れぬ一歩缶珈琲            章司
北風やらあめん店へ続く列
  両句共、小振りながら市井のおかしみが伝わります。
トンネルを抜けて落暉の枯野かな
 仔犬とも家族日和や七五三

 北風吹くや豆腐屋の笛遠ざかる         たづ
撮る役の爺はこまめに七五三
 枯れ野中SLの吐く黒煙

北風にすすめぬ園児頬赤し           せいじ
 賑わいの想いでかなし枯野かな 
  「想い出」と「思い で」かなと思います。

枯野来て自れの過去と往き会いぬ        さかもとひろし
侘しさも景の一つさ枯野行く

 清兵衛もある日行ったよ枯野道 
  たそがれ清兵衛ですか?

りぼん揺れ幸せ日和七五三            みどり
 人影なし北風の坂犬横切る
枯野行くあなたを心に棲まわせて

北風やデモ隊流れ解散す             弘子
 ぬれ鴉一羽枯野にホッピング

 北風や難問奇問受験生    寒明
ひとところ光集めて七五三
 病む犬や枯葉の褥あたたかき

 北風にわが名呼ばれて回り道           悠々 

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