銀座俳句道場 道場試合第7回決着!!  

10月の兼題は 「秋祭り」 「菊」 「柿」  でした。

講評: 「柿」には滅びゆく日本の風情が重なる、という文を読みました。
  あの赤さは、日本独特の赤さでしょうか。確かに落日が似合います。
   さて、今回の「天」九月十一日以降の世界の動きの中で、悲憤慷慨

  おろおろとしながらも、日常を過ごしている哀しみまでを思いました。
  美沙さん、今回の作品は揃っていました。「地」の句、「ぬぎ捨て」で、

  エプロンの主を誘い出した祭の賑わいが思われます。新婚のお嫁さんで
  しょうか。「人」は、「菊」の持つ風情、「菊供養」の滋味というもの
  をしみじみと伝えます。
  急に寒くなりました。お大事に。         谷子

 

 

【入 選】

 柿一本のこして家を解体す   美原子  
  ゴマあえがおいしく出来て秋祭      芽衣子
  ロケ隊や宿の家族は秋祭り        ライター
 「昔ね」と廃屋の柿語ります      陽湖  
  秋祭りマーチングバンドトラッタッタ    高木みどり
  難民の子らに何時くる秋祭り    大根の花

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削)

 敬老会 小菊引当て 母うれし        大根の花
 吊る柿 緑の木々に 色添えて
   「吊るし柿」


 お囃子の仲間や孫の里祭り          清七
媒酌を社員の多し菊日和
    「媒酌の」
 里の柿ひ孫の祝う喜寿の妻


 菊の花 美男美女が 咲き踊る        水蓮
 秋祭り 大漁 豊漁 ありがとう
柿の艶 われにも欲しい 若さかな


柿六本 ひとり占めして 少年のころ     河彦
    「柿六本をひとり占めして少年期」
 柿の実の 色に染まりて 月低く
 カラオケに 八尾の祭り 想いつつ


 指きりの約束わすれ秋祭り          美原子
菊咲きぬ袖を通さぬ着物有り         


 柿一つ赤くにじんで霧の海          蒼流
菊人形若きもののふうれいあり
    「憂い濃き若武者なりし菊人形」
 秋祭りみこしの顔は日本晴れ


娘巣立ち写真の母に柿ひとつ         沙羅双樹
    「娘(こ)が巣立つ写真の母に柿一顆」縁側に差し入る
    秋の日差しが見え、小津の映画のようです。



 沢の音 柿の実光る 空光る         ライター
   「沢音や」とすると、中七以降の畳み掛けが上手く
   前面に立ってきましょう。

 菊の香に 過ぎし花火を 重ねつつ                    


 柿の実のポタリと落ちぬ石畳        芽衣子       


 亡き母の 菊枕干す 目を病む日        高木みどり
 柿が好き 「八珍」賜わり 日にかざす     


どの顔も無口菊の香手向んと         小島弘子  
 新婚の少さき庭に木守柿           
    「小さき」


 柿を買う 梢空風見えぬ街で          美沙
菊花茶や 研究室の灯の孤独
母を訪う みちのくの町菊日和
ミッキーマウスを担ぐみこしも秋祭り


むせかえる花のにおいに菊人形         埜馳
   「花のにおいや」
 

菊人形も 月の灯りで 踊るのか       堀 裕子
秋祭り 笛太鼓の音は 高い空に吸い込まれ
亡き友が 作った柿のおひたし 忘れない
    もう少し韻文であることに留意して下さい。例えば
    三句目「亡友(とも)」と読ませれば、かっきりと
    貴女の気持ちが強く出ます。


 畦をゆく声はんなりと秋祭り         星瑠璃子
   「はんなり」を再考。もう少し土の香りが伝わるように。
 菊手向け杉木立の奥の空仰ぐ
木立より光降り立つ菊の墓
菊の墓アレルヤの声空に満ち
    「菊の墓」は、供えられた菊の花で埋もれるような墓だろう
    とは思わせますが、いささか強引です。



 ひょっとこに終われ泣く子や秋祭      ちあん
少年の涙熟柿に囓りつく


 柿落葉 業平の舞風の中          坂元宏志
 有田焼に菊盛りつけて菊之丞
     前進座に「瀬川菊之丞」の名跡が復活しましたね。
    先代の渋い芸風(嗄れた声が特徴でした)も懐かしいの
    ですが、新菊之丞は女形、期待してます。ナンテついあれ
    これ思いました。

 有田焼神仙境に菊慈童             
    ちょっと、材料過多です。作者には解っても、読者には
    多分コンナカナー、という感じで止まってしまいます。


夫の背のまろき縁側菊日和         よし子
ふるさとにありし日のごと秋祭り
 柿の木のパントマイムや西斜面


 柿二つ岩波文庫と過ごす時         青木佳之
肩の子が手綱捌くや秋祭り
   「手綱握りて」。「捌くや」というと、「肩の子」の愛らしさが
   出ません。

 菊の花散りて時は殻へ戻る              


自家製の干し柿いまも冷蔵庫       松村竹雄
    自家製の干し柿、食べてしまうのが勿体無くてまだタシナンデ
   いるのでしょうか。それとも、手間隙かけたのにいまひとつ。
   捨てるのも残念!で、眺めてはまた戻しているのでしょうか?
   「いまも」には後者の感じが強いですね。あれこれ想像して楽
   しい一句でした。

シャツターに切られる女将菊日和  
 お囃子に紙吹雪舞う秋祭


 スプレー菊短めに挿す誕生日       由弥子
ハーメルンの笛吹きがいる秋祭
 プーさんの靴飛び回る秋祭
    「飛び回る」を「が落ちてる」。前後を詠んで中心を想像させるのも
   ひとつの書き方です。

 

いつまでも 姑の秋祭り 銭単位      陽湖
   姑上は今もって、「円」ではなく「銭」と言われるのでしょう。
   「綿菓子は何銭だった?」と聞かれるのでしょうか。そこから
   始まる昔話が思われます。

 菊の精たち 人待ち顔の 無人駅


 夕陽あび秋を写して柿行灯         峰子
 秋の膳匂いほのかに菊なます         
    「夕の膳」「母の膳」と


 母の名に思いをはせて菊かをり       古井一歩
   母上のお名前が「菊」といわれるのでしょうか。
   ゆかしいお人柄が思われました。

戦場の子らにもとどけ秋祭り
 垣根超え梢の柿ぬし気りなりぬ


 秋祭りたわわに揺らぐコンチェルト     さと子(10月からの同人です)
 乾杯の香りほのかに黄金草
     ほのかや
 村の柿原生林をカンバスに 

      
〈道場主の作品〉

 柿たわわアフガンの子の顔青し               悠々
 人たらし言われてひさし菊作り
    「人たらしと」

 

このページについてのお問い合わせは次の宛先までお願いします。
www@hb-arts.co.jp