愛知県瀬戸市の、猿投山麓にある海上(かいしょ)の森は、名古屋市近郊にある最後の広大な里山です。ここは東海地方にしか生息していないシデコブシをはじめとした貴重な生物が見られ、野鳥の種類も多い豊かな自然の宝庫です。現在、21世紀万国博覧会の開催予定地とされ、跡地利用としての都市化計画とともに、この場所の自然環境に影響を与えようとしている問題が起きています。ではどんな所なのか、トピックスなど踏まえてお届けします。
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自然通信(4)
真冬の海上の森・1

牧野 紀子(愛知県)

 今年は山から降りてきたり、越冬に外国から渡ってきたりする冬鳥が多く見られないようです。木の実が豊富なこと、山に雪が無いこと、で平地に降りてこないという説があります。海上の森周辺でもツグミはまだ見ていません。それでも、四つ沢から篠田池、ものみ台で、合わせて7個体ものルリビタキがいました。残念ながら青い羽根が奇麗な成熟した雄には会えませんでしたが。見つけたら追い掛けたりせず、その場の樹になったつもりでじっとしてみましょう。警戒していたのがやがて目の前で色々な仕草を披露してくれるようになります。この日(12月27日)はアカゲラを2羽見て、アオゲラの隠れんぼに降参し、久々にイカルの再会も果たしたのでした。

 年明けに物見山へ登りに出掛けました。あいにく鳥は少ない日でしたが、それでも冬の楽しみが待っています。春の芽吹きに備えて樹木が冬芽の準備をしているのです。ここではオオカメノキとクロモジを紹介します。オオカメノキのチョキの形は葉芽、葉芽の真ん中の団子のような丸いものが、春花を咲かせる花芽です。冬芽一つとっても鱗のあるもの、毛で覆われた帽子をかぶったものなどその樹木の種類ごとに特徴があり、面白いものです。

 里の人家の庭の梅がもうほぼ満開でした。森の中のヤブツバキも開花しています。例年より1ヶ月早く、こうした生物季節の異変が各地で報告されたようです。1月8日に、気候分析で権威があるとされる米海洋大気局(NOAA)は、1997年1年間の世界の平均気温は摂氏16.9度で過去最高を記録し、エルニーニョ現象のほかに地球温暖化も関係がある、と公式に発表しました。(中日新聞1月9日)室内などにいれば何となく暖かい冬位にしか感じません。所が海上で本来は7、8月に咲くはずのダイコンソウが狂い咲きをしているのを見、大正池や篠田池が未だ凍らずにいる、という野外での肌身の体験が、この現実を物語っているのではないか、と感じるのは私だけでしょうか?

ルリビタキ
アカゲラ

イカル
オオカメノキ、クロモジの冬芽

トピックス

199年着工を目指す「新住宅市街地開発事業」と「名古屋ー瀬戸道路」は 「自然と共生する万博」につながるのでしょうか?

 自然と共生する万博の構想は、愛知県により県民に明らかにされていますが、それと同時進行している海上の森での「新住宅市街地開発事業」と「名古屋ー瀬戸道路」については、関係する瀬戸市民のごく一部にしか明らかにされていません。今回、そのおおよその手順が解りました。これについては、上杉さんが手掛けるHP、「瀬戸市の住人のページ」http://venus.synnet.or.jp/UESUGI/の中の項目、「更新情報」1998年1月7日、「都道府県知事による都市計画決定の手順の原本」を是非ご覧ください。

 それは、一言で言えば、「自然を極力守って行う」万博の開催より以前に、自然を大きく破壊する住宅開発が先行していく訳です。この手順の中で、私達一般市民が意見を述べられるのは、公聴会(98年4月頃)と意見書の提出(98年後半)の2回のみで、ここで大混乱しようが真面目に意見を述べようが計画に何ら反映することなく手順を進め、99年夏頃には国の事業認可がおり、事業決定すれば99年度中にはブルドーザーを入れて森の伐採を行い、進入路や沈砂池などを作ってしまいます。県民には「自然との共生」「住民参画」の新しい万博と公表している一方で、ひっそりと海上の森の一番豊かな部分を破壊する「新住宅市街地開発事業」を進めている訳です。

 従来より県は、万博の手法は、この新住事業でよると言っていたそうですが、それは具体的には「新住事業で造成し、その土地を万博に貸す」という大阪万博と同じ手法です。99年度中に事業決定されたその翌日から、関連の研究所、大学、劇場、会社にその土地を切り売りすることが出来、土台はその企業や会社等が構築し、その上にパビリオンなどを県が建てる計画だそうです。このどこに「自然との共生」があるのでしょうか?自然と共生する以前に、住民賛画もなく造成されてしまうことになります。県民に自然と共生する万博を行うと言いつつ、新住事業でひっそりと森を従来計画どおりのゾーニングで壊してしまうわけで、これは県民に対する一大サギだと言えます。新住事や道路に関して、県民に正当な情報公開もありません。(前月のバックナンバーも参照下さい)

 私達に残された時間は、あと最大2年しかありません。ただ、2年以内に万博構想が開催地変更とか分散型になれば、これらの事業も遅れていく可能性があります。勿論愛知県は例え開催地変更もしくは分散型になろうと新住事業は行う方針との事ですが、現実問題どうでしょうか?

 あと2年!!海上の森を万博と新住事業から守る方策を皆で考えたいものです。(海上の森自然観察会の発表文を元に文意を変えない程度に加除しました。)

その他のホームページもどうぞ!

 青山さんによる「海上の森」
 http://www.met.nagoya-u.ac.jp/AOYAMA/nature/kaisho.html写真が奇麗で、森に込められた思いが伝わってきます。海上で確認されたレッドデータに記載の動植物(但し植物は89年版NACS-J,WWF-Japanによるもの)、野鳥の会愛知県支部で確認された鳥のリスト、同会のアピールについて載っています。リンク先で他の海上関連のページに行けます。その1つに先ほどトピックスにも紹介した、

 上杉さんの「瀬戸市の住人のページ」
 http://venus.synnet.or.jp/UESUGI/では「開催地の変更を求める署名について」の中で、後にこちらで紹介している署名の全文紹介があり、メールで頼めば用紙も送って頂けるようです。尚代替地候補の1つ、陶土採掘跡地(瀬戸のグランドキャニオン)についても両者のページに載っていますので見てみて下さい。

 他にも色々なページがあります。この銀座一丁目新新聞のこのページをきっかけに、色々なページを尋ねて下さり、海上の森を知り、守る力になって頂けたら嬉しいです。

公共事業チエックを求めるNGOの会

 97年3月に「長良川河口堰建設をやめさせる市民会議」の天野礼子代表の呼びかけのもと、千歳川放水路計画に反対する北海道の森と川を守る会、諫早湾干潟干拓工事の潮止め強行工事に対し、水門を開けることを要求している諫早湾干潟研究会など約400の全国のNGOが所属している会。各団体の問題については、「公共事業チエック機構を実現する議員の会」と協力しながら、国会内の勉強会や議員視察などの積極的な活動を行う。当面は今国会に提出される、民主党や「議員の会」が取り組んでいる「公共事業コントロール法」(公共事業を国会の議決事項とすることで、官僚の手から取り上げる法案)や建設省の「河川法改正案」に対する「河川法対抗案」の作成に協力、議員立法ヘ向けて他党も巻き込む世論作りを優先させることを活動方針としている。海上の森に関しては、現在2団体が所属。

連絡先:東海ブロック アースデー名古屋 青山 己織
480-01愛知県丹羽郡扶桑町高雄覚王寺前47
tel/fax 0587-93-6491

名古屋瀬戸道路連絡会(通称:なぜ?の会) 代表 安藤嘉啓

 1996年9月頃結成。万博アクセス道路として計画中の名古屋瀬戸道路に反対するために活動する会。日進市民を中心として構成されている。特に会則等は設けてないが、何かあれば、口コミ等でネットワークを動かしている。会員は100ー1000名の間。現在県による万博跡地に計画されている新住宅開発事業について都市計画決定の手続きが進められており、名古屋瀬戸道路に関しては、日進ー長久手区間では12月8日から22日の間に愛知県知事案の縦覧と意見書提出の受け付けが行われた。なぜの会ではこの計画に反対する意見書を6万7千通、県当局へ提出。

連絡先:安藤嘉啓 FAX(05617)3-4450

 尚、海上の森での愛知万博開催の是非を住民自身で決めようという趣旨で現在も一部地域で継続中である、海上の森の「愛知万博」の賛否を問う県民投票を求める署名活動では、県民投票条例請求に必要な署名数、10万6千人以上の13万262人が12月20日現在集まったそうです。

署名活動にご協力下さい!

 地元の自然保護団体が、「21世紀地球地球EXPO『愛知万博』の開催地変更を要望する署名(海上の森以外に変更を!)」の活動を来年の春までをめどに全国に向け行っています。自然環境を破壊しない代替地(瀬戸市の陶土採掘跡地や青少年公園など)で万博を行って欲しいという内容です。連絡先は下記の通りです。ご協力よろしくお願い致します。

連絡先
万博オンブズマン 愛知県名古屋市西区江向町1ー60
          TEL 052-524-1586(昼)
海上の森自然観察会 愛知県瀬戸市柳ケ坪町98ー5
          TEL 0561-84-2953(夜)

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