銀座一丁目新聞

茶説

トランプ大統領の首都認定に政治的爆発起きる

 牧念人 悠々

米国のトランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都と認定したのは世界中に抗議の波紋を広げる。中東で紛争が起きれば石油のほとんどを中東から輸入している日本はその影響をもろに受ける。「銀座展望台」は次のように報じた(12月7日)。「米国のトランプ大統領よ。無辜の民が殺されてゆくのを想え。公約より命が大事である。米国がエルサレムをイスラエルの首都と認めたのは中東情勢を悪くする。テロや紛争が続発、不測の事態が起きるのは明らかである。50年も前にイスラエルがエルサレムを首都と宣言していながら、現在も多くの国は認めず今日に至っている。ユダ教、キリスト教、イスラエル教の三つの宗教がそれぞれエルサレムを聖地とする。理性を超える。人間の知恵が各国にテルアビブに大公使館を置く理由である。第一次中東戦争の休戦協定でエルサレムが東西を分断された後、西エルサレムを占領したイスラエルは1950年にエルサレムを首都と宣言、テルアビブの首都機能を西エルサレムに移転した。さらに、1967年の第三次中東戦争でイスラエルが東西ともに占領し、1980年には、イスラエルの永遠の首都であるとした。その年の国連総会を思い返せ。国連は東エルサレムの占領を非難し、その決定の無効を143対1(反対1はイスラエル、棄権は米国など4)で決議している。この数字の意味は重い」

トランプ大統領の「首都認定」にハマスは「民衆蜂起」を呼びかける。各地で抗議デモが起こり、ガザ地区からロケット弾がイスラエルへ打ち込まれその反撃の空爆も行われた。ニューヨークでは自爆テロで負傷を出す事件が早くも起きた。今後の予断は許されない。

アメリカの状況は世界とは違うようだ。米議会からは称賛の声が上がっているという(毎日新聞)。もともと米政界には親イスラエルの姿勢が根強い。すでに22年も前に米議会ではエルサレムへの大使館移転法案を圧倒的多数で可決している。

日本人にはユダヤ人とアラブ人がよくわからない。たとえばの話だが、日本人の留学生がユダヤ人の歯医者に行くとものすごく高い。「留学生で金がない」といっても負けてくれないがアラブ人の歯医者に行くと「貧しくてどうにもならない」というと十分の一くらいでやってくれるという(山本七平・加瀬英明著「イスラムの読み方」・祥伝社刊)。どちらかというとアラブ人の方が日本人に親しみやすいといえるのだが…

国連はいち早く安保理事会を緊急開催。米国への非難が相次ぐ。パレスチナをユダヤとアラブの両者に分割する案を決めたのは第2次大戦後の1947年の国連総会であった。「パレスチナ分割決議」である。経済同盟を伴う分割案で、イギリスの委任統治を終わらせアラブ人とユダヤ人の国家を創出し、エルサレムを特別な都市とするものであった。1947年11月29日国際連合総会で、この案の採用と実施を勧告する決議が採択された(賛成33、棄権10、反対13)。これをアラブ側は拒否、翌年5月14日、ユダヤ側は独立を宣言、アラブ側との対決が先鋭化し、第一次中東戦争が起こり1973年10月の第4次中東戦争までに至る。

ここへ来て國際協調主義から「米国第一主義」に転換したトランプ大統領の政策が「エレサレム首都認定」で一挙に政治的爆発を起こしたといえる。リーダーという者はその政策一つで世界情勢を一変してしまう。