銀座一丁目新聞

茶説

安倍第3次改造内閣は「罪滅ぼし内閣」、その前途は険しい

 牧念人 悠々

安倍第3次改造内閣を安倍首相自身は「結果本位の仕事人内閣」と評した。私は「罪滅ぼし内閣」と名付ける。仕事人とは忖度するに、法相・上川陽子、文部科学相・林芳正、防衛相・小野寺五典、経済斉世相・茂木敏充をさすのであろう。国民の信頼をはなはだ落とした「共謀罪の成立」「森本学園問題」「加計学園問題」「手詰まりのアベノミックス」の諸問題に対して、自民党内で良識があり実力を持った人物を一応充て事態をなんとか軟着陸させたいからである。さらに「己の驕り」を抑えるために異端児・河野太郎を外相に、「反安倍」・野田聖子を総務相に就任させた。その顔ぶれを見てつくづく日本は平和的な国だと思った。世界は激変しているのに日本だけはあまりにも内向き過ぎる気がする。先日、見た東京写真美術館の「世界報道写真展」を思い出す。そこには世界の厳しい現実が映し出されていた。

「報道写真展見て干戈無き夏の空」(荒木盛雄)

「報道写真展や平和ボケ猛暑日」(悠々)

東京都写真美術館で開かれた「世界報道写真展」(8月6日まで)には世界報道写真コンテストから選ばれた8部門45人の受賞作品を展示。圧巻は22歳の非番の警官がトルコ・アンカラの美術館で演説中の駐トルコ・ロシア大使アンドレイ・カルロフ大使をピストルで射殺された写真(2016年12月19日)。ピストルを手に持ち警官が「アラーは偉大なり」と叫ぶ姿。今の世界を凝縮している。

「人打ちし銃高々と稲光」(荒木盛雄)

安倍首相は2020年の改正憲法施行を自らの方針を「スケジュールありきではない」とトーンダウンする発言をする。国民が反対する事でも自分の信念を通すべき時は主張しなければ政治家と言えない。潔癖な日本人は一度「瓜田に履(靴)を入れた男」「桃李の下で冠を正した男」を信用しない。その人が唱える『人づくり革命』を誰も期待しなければ信用もしないであろう。今の政治不信は安倍晋三首相自身に向けられているのを悟るべきである。

アメリカで黒人を理由もなく射殺する警察にたった一人抗議をする黒人女性イエシア・エバンズ(35)の凛とした写真(2016年7月9日・ロイター)もよかった。

アメリカ・ルイジアナ州バトンルージュで2016年7月5日、黒人男性アルトン・スターリングさん(37)が白人の警官2人に取り押さえられて射殺された事件で、地元での抗議デモが続いている中、彼女が機動隊に対峙する姿が、「黒人の命も大切だ」運動の象徴的なシーンとしてネット上で拡散した。

日本の女性の社会進出は世界に比べて低い。改造内閣でも女性閣僚は2人に過ぎない。女性活躍担当相でもある野田聖子総務相の活躍を期待したい。

広い海の波間に一点、漂う黄色い浮き袋をつけた難民の溺死体の写真、初め写真を見てもよくわからなかった。遺体だとわかるのに時間がかかった。戦後72年間一人の難民を出さなかった日本はもう少し難民問題に関心を持ってもよいであろう。今後日本でも難民問題が大きく取り上げられるのは間違がない。上川法相の見識が問われる時が来るかもしれない。

「夕凪にただよふ難民浮袋」(荒木盛雄)

「エーゲ海ただよう遺体浮袋」(悠々)

内閣支持率は前月26%であったのが今回は35%に上昇した(毎日新聞)。「中身が変わるかどうかは、首相の心構え一つにかかっている」(毎日新聞・佐藤千矢子政治部長)という。だが、人間はそう簡単に変わるものではない。3年8ヶ月間の安倍内閣の体たらくが今日の姿である。自民党政権が続くとは限らない。元自民党員で現在無所属の若狭勝衆議院員が立ち上げた「日本ファーストの会」が次期衆議院選挙の候補者選びに向けて発足させる政治塾「輝照塾」は注目される動きである。都知事選挙では当選した55人中39人が新人であった「都民ファースト」にあやかろうというもの。新進党が政権の受け皿になっていない現在、「日本ファーストの会」が自民党の牙城を襲う情勢にある。世論調査で35%を超える「支持政党なし」層は十分にその受け皿になる。安倍改造内閣はそのうちにぼろが出るだろうと思っていたら沖縄北方担当相が「自分は素人だから役所の原稿を朗読する」とほころびが早くも出た。罪滅ぼしの先にあるのは“自民党崩壊”かもしれない。

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