銀座一丁目新聞

茶説

日露平和条約締結はいまだ

 牧念人 悠々

安倍晋三首相とプーチン大統領の日露首脳会議が12月15日山口県長門市で行われる。この会議は領土問題を含む平和条約締結交渉の最期のチャンスであるように思う。だが領土返還に道筋をつけるものに終わるようだ。確かに戦争でとられた領土は戦争で取り返すほかないのが国際常識である(沖縄は例外である)。すでにロシアの「領土の実効支配期間」が70年を超えている。その上「クルリ計画」(10年間・2007年開始)で4島が次第に整備され、国後、択捉は軍事拠点となっている。日本の実効支配は1855年(安政2年)の「日露通好条約」から90年であった。この現実を踏まえ、プーチン大統領は「領有権を主張し共同経済活動」を唱える。これまでいわれてきた「引き分け」「新しいアプローチ」という「キーワード」は何を意味するのか、何んであったのか…

論議を進める前に基本的なことを確認しておく。「日ソ共同宣言」(昭和31年12月12日発効)で「歯舞・色丹は平和条約が締結された後引き渡される」とある。2島の返還されるためには「平和条約の締結」が不可欠である。1991年(平成3年)4月、来日したゴルバチョフ大統領は「国後・択捉」を含む4島を交渉の対象と認めた。1993年(平成5年)10月の「東京宣言」では「日露首脳は歯舞・色丹・国後・択捉の北方四島の帰属問題について両国間で作成された文書や法と正義の原則に基づき解決することで平和条約を早期に締結する交渉を続ける」ことになった。それから23年、いたずらに年月だけが過ぎた。

次に島の面積や資源にふれる。4島が意外に広い。歯舞群島は101・6平方キロ。106平方キロの小笠原諸島とそう変わりはない。色丹島は255平方キロ。隠岐島244平方キロより大きい。国後島は1500平方キロ。沖縄本島は1185平方キロだから沖縄の方が小さい。択捉島は3139平方キロ。香川県1874平方キロや佐賀県2438平方キロより大きく、鳥取県3497平方キロに匹敵する。4島は豊かな資源にも恵まれている。昆布、サケ、マス、ホッケ貝、ホタテ貝、カニ。森林資源も豊か。国後、択捉には鉱産資源も眠る。金、銀、銅、鉛、鉄、亜鉛、硫化鉄、硫黄など。また放牧に適した土地も多かった。

こう見て来ると、ロシアが簡単に4島を返還するとは思えない。今、日本側が提案する都市開発・エネルギー・医療・農業など8項目の経済開発計画は極めて意義があるのは確かである。石油価格が暴落しロシア経済に深刻な打撃を与え、ウクラナ問題で西側から経済制裁を受けているロシアにとって日本からの経済協力は願ってもない。「新しいアプローチ」は日本としては4島の発展のために様々な形で尽力する。「お金で島を買う」のではなく、日露の住民がともに平和に暮らしながら島の発展に力を尽くすという形である。住民たちに「鼓腹撃壌」の世界を現出すれば『「施政権」「領有権」「主権」何処にありや』という状態になる。そうすれば誠意ある日露協力の行く末には4島返還の道が見えてくるという雰囲気作りである。ロシアの言う共同経済活動も日露の間にある様々垣根を取り払うに役に立つ。

領土問題で「引き分け」とは具体的に何を意味するか。一つの考え方として1998年(平成10年)4月、橋本竜太郎首相とエリツィン大統領の川奈会談で橋本首相が「択捉とウルップ島の間に国境線を引き平和条約を締結するがその後一定期間はロシア側に4島の施政権を認める」方式である。ともかく日本に「潜在主権がある」という考えである。要は安倍晋三首相とエリツイン大統領との「シンゾー」「ウラジミール」の信頼関係である。さらには自分の代でこの懸案を解決したいという熱意である。これがあって初めて難しい話も成り立つ。果たして両首脳の政治決断はどう出るか…