銀座一丁目新聞

安全地帯(513)

信濃 太郎

「重陽狂気の舞ひ核の宴」悠々

原爆は手におえない”怪物”だ。戦後71年間一度も何処にも使われていない。それでも核保有国は増えた。アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮である。原爆投下を命じたトルーマン大統領(33代)から11代目のオバマ大統領(44代)は「核兵器先制不使用宣言」をいいだして国内外の反対で諦めた。アメリカは朝鮮戦争、冷戦、キューバ危機、ベトナム戦争、湾岸戦争、9・11事件、イラク戦争、ISとの戦いを経て今日に来ている。この間、核が絡むのは朝鮮戦争とキューバ危機の2回である。

「核先制不使用」について日本が反対、韓国、英仏などが懸念を示している。もっともだと思う。「有事の際、核を先に使うかどうか」という問題である。核は保有するだけで「抑止力」になる。だから北朝鮮は懸命になって核武装に狂奔している。
「核先制不使用」するかしないか、戦略的には態度を不明にしていたほうが良い。また「核先制不使用」を宣言しても有事の際、真っ先に使う国も出てくる。戦争というのはそういうものである。だから日本が反対だというのは馬鹿正直であるともいえる。本来はあいまいにしておくのが戦略的には得策である。世界で唯一の被爆国である日本は「核先制不使用」政策に賛成すべきであるというのは正論である。だが世界情勢はそのような甘いものではない。それよりもテログループに核が渡らないように監視体制を整備するほうが先決であろう。「核先制不使用」政策はあまり意味がない。

北朝鮮が核武装すれば有事の際真っ先に使用すると思っていたら「一発でも使ったら北朝鮮は核の反撃を食らって破滅する」と識者が言っていた。「なるほどだ」と思う。今、北朝鮮に対抗して韓国では「核武装すべきだ」という声が高まっている。韓国が核を持てば近隣諸国で持っていないのは日本だけということになる。だが、日本は「ノー」というほかない。

歴史は繰り返す。どこかの国が核を使う日が来るのか。日本への原爆投下の経緯を見てみる。米国アラモゴルドで原爆の実験に成功したのは昭和20年7月16日。この報を会談中のポツダムで聞いた米英の首脳・トルーマン大統領とチャーチル首相は非常に喜んだ。日本への原爆投下の目的は1、戦争の早期終結、2、米軍の被害拡大を防ぐことであった。投下命令は7月25日、米国戦略航空軍司令官スパァツ中将に下された。

1、第20航空軍第509混成部隊は1945年8月3日以降なるべく早く、天候の関係上目視爆撃を許す場合に次の目標のうち一つに対して特殊爆弾第1号を投下せよ。
廣島。小倉、新潟、長崎

2、追加の爆弾は計画幕僚の準備が出来次第、これを前記目標に投下せよ。右以外の目標に関しては別に指示する。
第509混成部隊は5月半ばからテニアンに来て原爆投下に備えていた。この命令で8月6日広島、9日小倉と決まった。小倉はこれまで天候が悪かったので長崎に変更になったと伝えられてきたが戦略爆撃調査団の調べでは当日、関門上空にB29迎撃戦闘機「屠竜」2機が哨戒飛行していたため長崎に変更されたという。第2項は2発目以降、準備出来次第投下せよという命令であった。広島、長崎と2発で効果充分であった。なお命令の第4項には「今後の命令は陸軍長官(スチムソン、臨時委員会議長)と参謀総長(陸軍大将マーシャル)の承認によって出される」と書いてあった。

北朝鮮が核弾道爆発実験に成功したのが平成28年9月9日。21世紀の現代、テレビに手放しに喜ぶ金正恩北朝鮮労働党委員長が大写しで報道される。昔と違って秘匿せず堂々と公開する。目標は何処か。ワシントンか、東京か・・・神のみぞ知る。

「重陽狂気の舞ひ核の宴」悠々