銀座一丁目新聞

茶説

昨今の「円高・株安」に、老人の独り言

 牧念人 悠々

勝海舟に「世間は生きている。理屈は死んでいる」と言う言葉がある。社会は功利性、効率性を求めて動く。とりわけ人間の欲には限度がない。だから「生きている世間」を見誤ると間違いが起きる。「理外理」を悟らねばならないという。人間もそうだが日本国の生き方もきわめて難しい。

近くのスパーは月曜日が「野菜安売りデー」とあって大混雑する。庶民は1銭でも安いところに殺到する。このところの「円高・株安」などは関係ない。むしろ、諦めきっている高齢者の姿が目につく。60歳以上の世帯なら1千万円の定期預金を持つ。金利が5%なら年間50万円の利子があったはずである。それが夢の夢と相成ったからである。さらに2月16日から追い打ちの「マイナス金利実施」。愚痴も出なくなった。

ところで日本の首相の年間給与はいくらか、他国の大統領、首相と比べてどうかお知らせする(評論家・霜田昭治氏調べ)。子供を米国へ留学させている中国の習近平国家主席が最下位とは面白い。

•オバマ米大統領40万ドル(約4850万円)
•ハーバー・カナダ首相26万ドル(約3150万円)
•メルケル・ドイツ首相23万4400ドル(約2840万円)
•ズマ・南アフリカ大統領22万3500ドル(約2710万円)
•キャメロン・英国首相21万4800ドル(約2600万円)
•安倍晋三首相20万2700ドル(約2460万円)
•オランド・フランス大統領19万4300ドル(約2360万円)
•プーチン・ロシア大統領13万6000ドル(約1650万円)
•レンツィ・イタリア首相12万4600ドル(約1510万円)
•ルセフ・ブラジル大統領12万ドル(約1460万円)
•モディ・インド首相3万300ドル(約370万円)
•習近平・中国国家主席2万200ドル(約270万円)

さて、日銀のマイナス金利導入(日銀当座預金の一部金利マイナス0.1パーセント)。その成り行きは微妙である。平成25年3月、異次元緩和前、日銀が持つ金融機関の「当座預金口座」の額は58兆円であった。異次元の金融緩和で「当座預金口座」の額は約260兆円にも増えたが期待したように市中には回らなかった。今度こそはこの措置で銀行は日銀に預けると損するからお金を貸し出しに回すようになり投資や消費の活発化につながると考えた。そうなるかもしれない。「経済は生き物」。「理外理」の働きをする。年初からの円高・株安の流れに歯止めが掛るはずであった。ところが先に金利を上げたばかりの米国の景気指標が意外に悪化したこと、欧州の金融不安、とりわけドイツ銀行の巨額赤字問題、原油安、中国など新興国の経済の減速などにより、安全資産と言われる円が買われ1ドル=108円台の高水準になってしまう。円高につられて株も全面安となり1万5000円を割り込み1年4ヶ月ぶりの安値に戻った。その後少しは戻ったもののこの傾向は当分つづきそう。「円高」となれば輸出面では打撃を受ける。とりわけ自動車の輸出は被害甚大だろう。

円が安全資産なのは、累積赤字がGDP(498兆円)の230%もあるのに家計の貯蓄がGDPの300%もあるからだろう。その上日本人は勤勉だし優れた技術を持っているからであろうか。“比較的安全な”資産と言われる。だが貯蓄率が15パーセントから2%に低下してきているから早晩このメッキもはがれる。どうなることやら…

株価は経済の先取りをするといわれる。とすれば日本経済は減速することになる。なるほど安倍政権が「1億総活躍時代」と声高に叫ぶはずである。それには規制緩和、構造改革、既得権の打破などがどうしても必要になってくる。それが簡単にいかない。理屈通りに事は運ばない。社会は生きている。わかっているが感情。掟が許さないのだ。理屈でない世界がある。とかくこの世は住みにくい・・・最後に泣きを見るのは庶民という事か…