銀座一丁目新聞

茶説

「初春やこの道はいつか来た道」

 牧念人 悠々

新年にはよく唱歌『一月一日』を歌った。

「年の始めの 例(ためし)とて  終(おわり)なき世の めでたさを
松竹(まつたけ)たてて 門ごとに  祝(いお)う今日こそ 楽しけれ」

「楽しけれ」は単に楽しいということではない。佐竹昭広著「古語雑詠」(岩波新書・1986年9月22日第一刷発行)によると、無住法師の「雑談集」(1305年)「今昔物語」「宇治拾遺物語」安楽庵策伝の「醒酔笑」では「たのし」は裕福・豊かの意味で鎌倉・室町を経て江戸にまで存続したという。なお『かなし』は貧乏の意味である。昨今どうやら新年を迎えて「楽しけれ」と言う心境ではいられなくなってきた。生活保護を受けている人は160万人を超えた。200万人を超えるのは時間の問題だ。

さて今年の日本経済はどうなるのか。「風俗は政治に優先する」と評論家大宅壮一はいった。この風俗から何が判断できるか…。個人尊重の行き過ぎから利己主義になりすぎ自分さへよければよいという日本人が多くなった。極端な例だが東海道線の踏切に三脚を置き、列車を写真に撮ろうとしてとして逮捕される男(46)まで出る始末である(昨年12月20日)。政治は大衆にこび、「ばらまき政策」で人気を得ようとする。勢い財政の赤字が増える結果となる。国の借金1400兆円はその付けである。日本経済は先行きが危ないと少なからざる識者が指摘する。第二ステージに入った「アベノミックス」は今年こそ、その真価を問われる。

昨年暮れ「銀座展望台」に書いた(12月18日)。『米国ゼロ金利解除。「ゆっくりとすすめる」とイエレンFRB議長はいう。ということはアメリカが高金利時代を迎えるということだ。目先の利益しか追わない「株の世界」は軒並みに株高となる。暢気なものだ。1人ぐらい警鐘を鳴らすものはいないのか。日本経済破滅の第一歩と警戒したほうが良い。ドル高円安―輸出企業追い風・中小企業輸入コスト上昇で苦境―食品・日用品の値上げ―消費減退―過度な円安ーこの悪循環で日本経済は嵐にさらされかねない。5年後GDP600兆円達成は夢の夢とる…』

「年金や思案あぐねるお年玉」悠々

生産人口が減少に向かい、高齢化人口が増えることはGDPの成長を妨げる。日本の潜在的成長率は1%ぐらいである(2015年度実質成長率1.2%)。さらに社会保障給付費(2016年度31兆9700億円・歳出総額の3割を占める)の増加は財政の赤字を増やすことになる(2016年度国債発行額34兆4300億円)。この苦境を乗り切るのは既得権益の岩盤を崩す大胆な規制緩和と新しい先端をゆく産業の創出である。もちろん増税を含む税制改革も必要である。「異次元の金融緩和」はすでに限界が見えてきた。目標の物価上昇律2%も0%で達成出来ず財政規律も緩みがちである。大勢順応型の日本人だがこのままでは行き先は地獄である。危ない危ないと思いつつ行くのでは芸がなさすぎる。安倍政権発足3年目、重大な岐路に立ったといわざるを得ない。

「初春やこの道はいつか来た道」悠々