銀座一丁目新聞

花ある風景(579)

並木 徹

俳優座の「ラスト・イン・ラプソディ」を見る

終末医療をめぐる問題を扱った、作・美苗、演出・原田一樹・俳優座の「ラスト・イン・ラプソディ」(LAST INN RHAPSODY)を見る(11月20日・東京六本木・俳優座劇場)。安楽死の問題も出てくる。それを否定する患者も出てきて「医者の使命は人の命を助けることだ」と叫ぶ。昨今、延命処置をしたくないという人が多くなってきたとも聞く。作者・役者の思いは家族を問わず旅立つ人を温かく見守れればそれでよいということであろうか…。

舞台は東京下町の岡本診療所。ここは生活保護受給者や路上生活者の患者たちを受け入れている。岡本亮作医師(可知靖之)には20年前患者を安楽死させたとして罪に問われた過去がある。今は死を患者本人の希望に任せる。末期がんの元女優松原沙織(瑞木和加子)がこの診療諸所をあえて希望して入院する。古株の入院患者・緑川玲子(川口敦子)、須藤久美子(阿部百合子)が何くれと面倒を見る。舞台に一本の彩りを添える。玲子はソーシャルワーカーの滝沢耕平(脇田康弘・森尻斗南)の進めで患者に歌の指導をする。次第に患者たちも歌に熱心に取り組む。患者に笑顔が増え、体調も良くなる。滝沢は患者の立場に立ってよく面倒を見る。借金苦から病魔に侵された野々宮五郎(河原崎次郎)が死ぬ前に、去って行った娘さんに合わせようと努力する。そこへ娘の野々宮良子(山本順子)が訪ねてくる。父親と対面すると良子は「母親を苦しめた人、一人で死ねば良い」と捨て台詞を吐いて去る。終始無言であった野々宮は間もなく死ぬ。病状が進行沙織も車椅子生活となる。桜の花びらが散るころ、車椅子を押す滝沢は沙織に傍らの看護師相田翔子(佐藤礼菜)と結婚することを告げる。やがて沙織は息を引き取る。

滝沢は沙織が27年前に故あって別れた息子であった。滝沢は里子、施設と経て岡本医師のもとで働く真面目な青年。翔子も施設経験者であった。温かな人たちに見守られての沙織の死であった。患者・當間英輔(庄司肇)は岡本のやり方に反対で最後は近くの交番に訴える。警官が駆けつけるが滝沢が「みんなで話し合いましょう」といい、幕が閉じられる。

医者は人の命を助ける者、だが、あらゆる薬、延命機器を使って患者の命を救うことが人間の尊厳を傷つける場合もある。患者に生と死を選ぶ自由があるのか、自由には義務をともなう。勝手なことは出来ない。対立。限界、壁、自由。どうしても理解しえない領域がある。「あいまいな部分」「境界線」これを超えるのは人間の『暗黙の諒解・阿吽の呼吸」が必要である。ひとことで言えば「神の領域」である。話し合って解決する事だろうか…