銀座一丁目新聞

茶説

ラクビーブームの意味するもの

 牧念人 悠々

日本にラグビーブームが到来した。13日から始まるラグビーのトップリーグは観客動員数が史上最高の40万人を超えるものと予想されている(昨年は39万6421人)。五郎丸歩選手(29)がいる「ヤマハ発動機」対「トヨタ自動車」の試合はすでにチケットが完売された。他の試合のチケットの売れゆきも順調だ。五郎丸選手がスーパーラグビーのレッズ(オーストラリア)で活躍すれば、このラグビーブームは少なくとも2019年の日本で開催の「W杯ラグビー日本大会」まで続くだろう。ラグビートップリーグの試合がテレビ放映されればさらに火が付く。イギリス発祥のこのスポーツが日本古来の伝統文化である大相撲と肩を並べるぐらいになってほしいと願う。

「銀座展望台」(10月13日)に次のように書いた。「ラグビーW杯イングランド大会で日本チーム3勝するも惜しくも8強入りを逃す。1991年の大会で1勝して以来連敗してきた日本が3勝したのを地元紙は快挙と称賛する。われわれもその3勝を価値あるものと絶賛したい。『今、自分を変える。そうでなければ未来は変わらない』エディー・ジョーンズHC(55)の指導のもとに基礎体力の強化、ラグビーの基本から徹底的に鍛えなおして猛練習をしてきた。当たり前のことをしてきたといえばそれまでだが多くの場合、途中で挫折する。それを実現するのがリーダーシップというものだ。ともかくエディーHCと猛練習に耐えた選手たちに拍手を送りたい」

ここにブームが起きた要因がすべて書かれている。“ポッカとあいた民衆の心の空間”に震えるような感動がいきなり飛び込んだ。その衝撃は大きかった。優勝候補撃破・連敗を24年ぶりに止めただけでなく3勝獲得。五郎丸が史上初のW杯イングランド大会のベストフィフティンに選出と驚くべきことばかりであった。民衆にとって日常生活では得られぬものばかり。乾ききったのどに新鮮な水が注ぎこまれる感じであった。

ふと早稲田大学のラグビーの選手であった外務省の奥克彦大使の事を思い出した。2003年11月29日 井ノ上正盛三等書記官と共に北部イラク支援会議に出席するため、ティクリート(イラク北部)に四輪駆動の軽防弾車で向かう途上、銃撃され殉職した。享年45歳であった。彼が残した言葉が「今やらなければいつやるのだ」であった。

社会・政治・経済に与えるインパクトも大きい。エディー・ジョーンズに強烈なリーダーシップを見る。「自分を変える」心構えの必要性も知る。各自が考えて行動することを学ぶ。「AII FOR ONE」「ONE FOR ALL」の精神こそ利己中心主義で刹那的な行動をとる若者の多い日本にとって必要ではないか。

「ラガー等のそのかちうたのみじかけれ」(横山白虹)