銀座一丁目新聞

花ある風景(574)

並木 徹

こまつ座の「マンザナ、わが町」を見る

井上ひさし原作・こまつ座の「マンザナ、わが町」を見る(10月6日・東京・新宿・紀伊国屋ホール)。

▼ところ
アメリカ・カリフォルニア州オーエン郡マンザナ。
▼とき
1942年(昭和17年)3月下旬の5日間。
▼登場人物
ジャーナリストのソフィア岡崎(31歳・土居裕子)、浪曲師オトメ天津(38歳・熊谷真実)、サチコ斉藤(20代後半・伊勢佳世)、歌手のリリアン竹内(18歳・笹本玲奈)、女優のジョイス立花(22歳・吉沢梨絵)。

昭和17年3月と言えば大東亜戦争が始まって4ヶ月立つ。この年の2月19日に出された大統領命令によって米国西海岸に住む日系米国人11万9803人(その3分の2は2世)が全米10ヵ所の強制収容所に収容された。2世は米国市民。戦時中とはいえ、その市民から一方的に一切の財産を奪ったのは最も人権を尊重する民主主義の国、アメリカらしからぬ行為であった。

舞台は日系人女性5人によって演じられる。所長から収容所(収容人員1万46人)を「自治の町」として称賛する朗読劇の上演を指示されるところから物語が展開する。ソフィア岡崎は劇の演出にあれこれと苦労する。日本寄りのオトメ天津とアメリカ寄りのリリアン竹内は事ごとあるごとに対立、言い争う。他の3人も自己主張する、それぞれ個性ある女性たちである。ところがソフィアが大統領あてに今回の日系米国人に対する不当な扱いに対する抗議文を出したことで収容所長によって「不忠誠」とみなされてカリフォルニア州の北端にある「収容所」に移管されることになった。この収容所には「不忠誠」組や「日本帰国希望者」など1万8789人収容されていた。途端に4人は団結して所長に抗議に行く。「三人寄れば文殊の知恵」「四人そろえば諸葛孔明」。一計を案じた。オトメの引く三味線に野って佐渡おけさが響く。浴衣姿のジョイスが踊る。そこへサチコが現れて「立場の弱い日系女性にゲイシャダンスをさせて恥ずかしくないのか」となじる。所長が「みなかったにしておくれ」と言うことで一件落着、と考えたが4人は戦略戦術なしで堂々と所長に立ち向かう。その所作がそれぞれに面白い。『収容所移管の指示』を無事、撤回になる。不当なことには立場の違い、ものの考え方の相違を超えて立ち向かった女たちの戦いであった。どんなに劣悪な境遇にあっても生きるために自分たちで考え、行動して自分たちが理想とする場所に替えるのが人間としての務めだと井上さんは言いたかったのであろう。いつもながら5人の言葉のやり取りが絶妙でしばしば会場から笑いが起きる。

なお、アメリカはレーガン大統領時代の1988年(昭和63年)8月日系日本人を強制収容したことに対して謝罪を行い、一人当たり2万ドルの補償金と教育資金12億5千万ドルを支払ったことを付記しておく。もっともこの時、すでに収容された日系日本人のうち5万人が死去していた。