銀座一丁目新聞

茶説

国防か地方自治か、どちらが優先するか

 牧念人 悠々

私は考える。「国防か、地方自治か」。「どっちも」と言うわけにはいかない。私は「国防」をとる。国益が優先すると思うからである。戦後70年間、日本は他国に侵略されることなく平和と安全を享受して経済大国になった。国際政治学者、黒野耐さんはその著『戦うことを忘れた国家』(角川ONEテーマ21・2008年7月10日刊)でいう。「有識者を含めた国民の多くは国際安全保障と言う公共財にタダ乗りして、米軍に守られたことを忘れ、戦うことを拒否したから平和を維持できたと錯覚してしまった」。この指摘通りである。一連の安保法案はその錯覚を正すものだ。思想の自由・表現の自由を認めるが、野党が反対しこれに呼応した国会前のデモは私には理解に苦しむ。

そして黒野さんは「核武装した北朝鮮、軍事大国化する中国、富国強兵政策を推進するロシア、国際テロの脅威に対して日本が今までのように自らの安全保障を大きくアメリカに依存し、国際貢献の戦に少しだけ参加して総合安全保障の名に隠れて金で片づけるという姿勢は許されなくなっている」と結論付ける。

一連の安保法案が提案される背景である。この点が分かっていない人々が少なくない。

端的な例を挙げる。昭和52年から昭和58年にかけて起きた北朝鮮による拉致事件である。いまだに解決していない。北朝鮮は調査して報告するといいながら一向に実行していない。これは明らかに日本の主権を侵害した事案である。再三の交渉にかかわらず一向に進展していない。これが軍事力行使と言う担保のない日本外交の実態である。拉致被害家族は空しく老いてゆくだけである。

沖縄県の米軍普天間基地の名護市辺野古移設を巡り沖縄県の翁長雄志知事は辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消すことを表明した(9月14日)。普天間基地の辺野古への移転反対を表明して当選した知事だから当然の行為だと思うが日米同盟、朝鮮有事などを考えれば沖縄は「戦略要地」である。にらみを利かせる場所である。しかも沖縄に駐留しているアメリカの海兵隊は第七艦隊と連動して運用されている。とすれば、辺野古への基地移設は国防上欠かせない。だが沖縄の移設反対の声は極めて強い。

「国防か、地方自治か」。国が強行すれば血の雨が降るかもしれない。国益上やるほかない。自国を守ることを忘れて国は滅びる。「どっちも」と言うわけにいかない理由である。