2013年(平成25年)3月10日号

No.567

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山と私

(94) 国分 リン

― 東北大震災時に居た「蔵王スキー」へ再び ―  

 忘れもしない2011年3月11日14時46分、山がうなり、立っていられないほどの揺れに何が起きたのと友と二人、宿へ戻ろうと必死だったことや、停電になり、情報が無く、水道も使用できなくなり、いかに非常時対策が必要かも痛感し、周囲の人たちの親切で無事東京へ戻れたこと。その後の東北の悲惨さ、それに増してわが故郷「福島」の原発被害が今もなお続き、何か行動を、と思う。昨年も大勢の山仲間たちと、東北復興の旅へ出かけ、お正月は「蔵王スキー」に、山と私83に掲載した。
  

 元旦に蔵王・地蔵様に新年の挨拶と、一年の無事を願うことができた。今年の大地蔵様は雪が意外に少なく、子地蔵様を従えた姿が寒空に座しておられる。雪の布団を被ったほうが温かいのではと思う。さすがにお正月、次々とゴンドラでスキー客が登ってきて、大賑わいだ。ふと見ると、ホテルの従業員数人が地蔵様に一年の商売繁盛の願かけに来たと話していた。雪が少なく、まだモンスターは出来ていないが、折から青空になり、樹氷がキラキラ輝き素晴らしい。平均年齢75才の私たちグループは、スキーウエアとヘルメットとマスクなので、私を覗いて滑る姿は30代にしか見えず、あっと言う間のスピードで降りて行ってしまう。ざんげ坂の細い急斜面をどきどきしながらの私の滑りと大違いである。夜行バスでの蔵王スキー場入り、若者並みのスケジュールに驚きである。

 31日に初滑り、途中ガスが湧き視界が効かず、取り敢えずユートピアゲレンデは雪質が良く、滑り易いとのことで、数回滑り降りた。リフトに友と一緒に何度か乗り、降りようとした瞬間、思いもかけない事故が起きた。私と友のスキーが重なり自由が利かず、二人で重なり転んで止まった。私は頭をゴンと打ったがヘルメットで無事、友は足が痛いと叫んだ。「ウワーどうしよう。足が骨折したら。」冷や汗が出た。急いでスキーを外し、友を起こしたら「足は大丈夫だ。」良かった。「でも腰が痛い。」心配なので、一緒にホテルに戻り、友は早いほうが良いとフロントに「医者に行きたい。」と尋ねたら、直ぐ電話で確認をしてくれ、車で蔵王温泉クリニックまで送ってくれた。年末もお正月も無く診療をしていると入り口に書いてあった。友は保険証も持参していた。青年達が数人待合室に、診察室から肩から胸に包帯をした若者が出てきた。スキーで転んで肋骨を骨折したと、その仲間たちのようだが、驚いたことに、怪我した本人が玄関前の灰皿の前で、タバコを吸い始めた。気持ちを落ち着かせるためなのか、ちょっと気の毒になった。次に友が呼ばれ診察室に入った。「打ち身だけであれ。」と祈る。

 友が診察を終え、「レントゲンを撮ったが骨に異常はなし。腰の打身だけだって。腰にコルセットをつけられ、1週間は安静にして、温泉も長湯は駄目。」歩くと腰に響くらしく、「痛い、痛い。」と、彼女が可哀想だ。「ごめん、つい声が出てしまう。」夜は鎮痛剤で、よく眠れたようだ。元日早々から彼女はクリニックへまた出掛けた。「結構歩けたよ。だいぶ痛みは柔らかくなったし。」2日には帰る準備を終わると、「歩かなければ、運動不足だし、5000歩目安にホテルの中を歩くね。」安心と同時に彼女のパワフルさの基を知った。後日電話で「もう大丈夫、田沢湖スキーに行けるよ。」安心した。
 エーデルワイスクラブのスキー部の仲間たちと、お正月を共に過ごそうと10年前から「蔵王スキー」に来ている。日本スキーのメッカで東北を代表し、それに温泉が素晴らしい。毎年同じ時期に来ているが、自然は変化が激しい。降雪量もその年により違うし、雪質もまるで違う。でも樹氷原コースのロングコースは気持ちが良く蔵王が好きだ。

 新年の挨拶をお互いにして、準備をして、初滑りに向かう。早いほうが蔵王ロープウェイ山頂線が混雑しない。やはりお正月は家族連れが多い。私達は滑り専門2人とカメラ組2人に別れ、私は風景をゆっくり楽しむために、カメラ組になった。連れのGさんはカメラ歴50年の大ベテランで、この10年ブルーポピーを求めて世界各地に撮影紀行をしている。彼女と一緒に撮影していてとても勉強になった。
被写体に話しかけて、「本当に美しいね。きれいだね。ありがとう。」きっと気持ちが写真にも出るし、心を込めた写真は違う表情をするにちがいない。なるほど気持ちが温かくなった。「花のランドネ」PCのホームページに彼女がアップした写真を観た。彼女の写真を撮っている姿と重なり格別であった。

 スキー組の2人は16時ごろ「全コースを滑ってきたよ。ちょっと待て、の上級コースも平気だよ」78才の2人は怖いもの知らずで恐るべし。それにくらべて私はスキーを楽しく滑るには上級コースは腰が引け、まだまだと思うし、上手になりたい気持ちが薄らいでいる。これでは駄目なので初心に戻り、スキーに行きたくて、滑りたくて、の気持ちを取り戻したいのが、今年のスキーの目標となった。