2012年(平成24年)12月20日号

No.559

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茶説

安倍新内閣に大いに期待する

   牧念人 悠々 

 安倍晋三内閣が26日に誕生する。当面は東日本大震災の被災地の復旧復興にスピード感を持たせ、景気回復に全力を尽くすべきであろう。

 自民党の圧勝は漁夫の利であり、多党乱立が有利に反応した。また「風なき圧勝」ともいわれる。勝因は一言でいえば民主党に統治能力がなかったということに尽きる。とりわけ野田佳彦さんの前のふたりがお粗末であった。民意がよくわかる比例での得票数を前回(2009年)と比較すると、民主党が前回の選挙で獲得した票数のうち2,000万票が第三極へ流れた。自民党も前回獲得した票数を200万票下回った。圧勝したと言え、ほめられた勝利ではない。大勢の判明した16日深夜の記者会見で安倍晋三総裁に「自民党に対する厳しい目が続いている」と言わしめた理由である。だが、自民党には「西風」が吹いた。選挙のさなか北朝鮮が長距離弾道ミサイル発射実験に成功した(12日)。北朝鮮の核弾頭がアメリカ本土へ届くのが時間の問題となった。日本はこのままで良いのか一抹の危惧を国民に与えたのを見逃してはなるまい。金正恩総書記は「我々はいつでも全面戦争に対処できるように準備していなければならない」と発言している。日本国民も拉致問題、北朝鮮の核保有、長距離弾道ミサイル実験を通じてしっかりと国の危機を肌で感じて始めた。さらに中国の尖閣諸島へ領海、領空侵犯である。平和憲法を口先だけで説くだけではだめなのを悟った。そこへ「東風」も吹いた。アメリカが投票日前日「尖閣諸島は日米安保条約の対象である」と中国に通告し、自民党の後押しをした。

 投票日の朝。近くのスーパーに買い物に出かけた。安い生鮮食料品に人だかりがしていた。1円でも安いものをという主婦の姿があった。安倍政権誕生のきっかけとなった12月16日の“誕生日の花”は「カンギク」。「冬ざれの庭カンギクの黄の色の今日の余韻を明るくしたり」《鳥海昭子》寒さに心身が震える日はカンギキに励まされるという。

 安倍さんの登場で株高、円安となった。17日の円相場は1ドル84円01〜03銭と前週末比35銭安、株価は9828円88銭で前周末比91円32銭高であった。「日銀により強力な金融緩和を迫る」の発言は、その是非はともかく国民を明るくさせた。ともかくぶれずに掲げた公約は確実に実行に移してほしい。一度ぶざまな形で総理の座を去った人が再び蘇るのは「カンギキ」の強さであろうか。カンギクは白や黄色の小ぶりの花がさみしい冬の庭を明るくするという。今回の民主党政権から自民党政権が誕生したのと似ている。冬の間だけでなく来年の夏にはさらに大きく強い花を咲かせてほしいものだ。