2012年(平成24年)8月20日号

No.548

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茶説

習金平・中国の出方を見る

  牧念人 悠々

 習金平がこの秋から中国の表舞台に登場する。事あるごとに強硬路線をとると見る。すでにその兆候は見えている。むしろ日本などその眼中にないかもしれない。まず習金平と軍との関係である。大学を卒業した20代の時に軍事中央委員会で仕事をしている。それだけ知り合いが多く、内情に詳しいということである。同委員会は軍の最高機関で、12名で構成されている。主席(胡錦涛)副主席(習金平)以外はすべて制服組である。軍は国家の軍隊ではなくて共産党の軍隊である。この点は見落としてはいけない。「政権は銃口から生まれる」と共産党は良く豪語した。天安門事件(1989年6月)の際、趙紫陽共産党総書記は天安門広場を占拠している大学生らへの武力使用を反対したが中央軍事委員会主席ケ小平に一蹴され、趙紫陽が失脚した。近く習金平が主席の座に就くのは間違いあるまい。次は、妻の彭麗媛が解放軍総政治部歌舞団の団長で少将。軍の中では評判がすこぶるよい。

 父親の習仲勲は共産党の要職を務めたことのある人物である。習金平はかって父親が共産党の要職を占めた息子たちのグループである「太子党」に属する。軍隊の中に太子党の仲間がいてすでにネットワークを作っているといわれる。「習金平は軍の身内」と言われる所以である。中国が年々軍備を増強しているのは周知の事実。アメリカに次ぐ軍事大国である。中国の軍備は兵力160万人、海兵隊1万人,艦艇950隻134.1万トン、飛行機2040機。これに対して日本は年々防衛費を減らしている。兵力14万人,艦艇143隻44.8万トン、飛行機430機。中国とは問題にならない。2010年9月7日尖閣列島付近で起きた中国漁船による「巡視船衝突・公務執行妨害事件」で非が中国側にあるにもかかわらず、北京日本大使館前での大規模な反日デモ、青少年交流のストップ、レアメタルの輸出禁止などの強硬措置を打った。日本は「日中関係を考慮す」と称して中国船長を釈放した。中国は戦争しても日本には勝てると判断したからこの強硬措置に出たのだ。普天間基地問題で日米同盟が揺れている時でもあった。今回のオスプレイの配備をめぐって日本で反対運動が起きているのを見て中国側は快哉を叫んでいるであろう。

 矢板明夫著『習金平』―共産中国最弱の帝王―(文芸春秋)には北朝鮮重視の姿勢を取っていると指摘する。つまり朝鮮戦争で義勇軍として米軍と戦った中国の正規軍が18万人も戦死している。万が一北朝鮮が崩壊することがあると「死んだ仲間たちが浮かばれない」と思っているという。これまで以上に中国は北朝鮮寄り態度を示すであろう。北朝鮮の核放棄はないと判断した方が良い。

 2005年7月、今から7年も前のことである。中国人民解放軍の少将で国防大学の教授・朱成虎が北京で開かれたシンポジュームで「中国は西安以東の全都市が焦土となるのを覚悟している。米国も数百の都市が破壊されることを覚悟しなければならない。中国は米国との核戦争を恐れていない」と発言世界中を驚かせた(前掲矢板明夫著)。列強にいじめられた過去を持つ中国は『今に見ておれ』と言う心情がある。もちろん日本にも持っている。この発言は単なる脅しではない。本音に近いとみてよいであろう。それにしてもあまりにも日本は平和すぎる・・・。ロンドン五輪ではアメリカ金46個で断トツであるが2位は中国で38個である。合計メダル数は88個、アメリカの104個に次いで2位である。米ソ対立は昔の話、今はアメリカの相手は中国である。