2012年(平成24年)4月20日号

No.536

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茶説

春うらら気概問わるる志士の文字

 

 牧念人 悠々

 春本番に誘われて多磨聖蹟記念館(桜が丘公園内)を訪ねる(4月12日)。午前9時30分頃自宅を出る。京王線府中駅構内で梅干しとツナの握りめし2個を買う(260円)、お茶は自宅で小さなボトルに入れて来た。あわてることもないので鈍行に乗る。聖蹟桜ヶ丘駅(130円)で下車、歩こうとも考えたが少し道のりがある。駅前から記念館前(210円)までバスにする。

この朝、「銀座展望台」に次のように書いた。
『春本番。桜前線北へ・・・
 北朝鮮、ミサイル発射へ(註・4月13日打ち上げ失敗)。金正恩の第一書記就任を一面トップで報ずる新聞がある。私ならべた記事だ。昨今頭を色々悩ますことが少なくない。ところで物忘れがひどくなった。人の名前がなかなか出てこない。仕方なく1+1=2,2+2=4と数えてみる。

 周りの友人に奥さんが認知症で施設に入っているというのが少なくない。もちろんその逆もいる。歩くと脳が活性化する。原稿が書けない時に散歩すると書けるようになる。

 世界保健機構の報告書では世界の患者数が20年後に今の2倍に、40年後には3倍に増えるという。2050年の人類は100人に1人以上が認知症患者だという時代を迎えるそうだ(毎日新聞夕刊)。

 認知症は2004年12月からこれまで呼ばれていた「痴呆症」が侮蔑的用語だというので変更された。ちなみに「認知症」は脳血管や脳細胞の障害で記憶力判断力が低下し日常生活に支障が生じる程度までに至った状態を指す。とすれば私の場合はまだ日常生活に支障が生じていないということか・・・』

 多磨聖蹟記念館(多摩市連光寺5−1)は一度訪ねたいと思っていたところ。バス停を降りると目の前が「桜が丘公園」であった。入り口から入って右側に明治天皇と昭憲皇太后の御製碑がある。「春ふかき山の林にきこゆなりけふをまちけむ鶯の声」(明治天皇)「兎とる網にも雪のかかる日にぬれしみけしを思いこそやれ」「春もまたさむきみやまの鶯はみゆきまちてや鳴きはじめけむ」(昭憲皇太后)謹書したのは宮内大臣を務めた田中光顕伯爵である。巨大な御影石に御製とお歌がしたためられてある。風雪で文字が読み取れない。この日訪れた多くの人たちはこの御製碑には見向きもしなかった。明治天皇はこの地を明治11年から17年までに4度行幸されている。この御製は明治17年3月28日から3月31日まで連光寺に兎猟に来られた際に詠まれた。歩を進めると鉄筋コンクリートづくり、クリーム色のギリシャ風の殿堂がある。これが記念館である。昭和5年田中伯爵が発起人となり建設した。この公園は3つの雑木林の丘で構成されている。その中で一番高い「大松山」に記念館がある。ホール中央に明治天皇の騎馬像(高さ3m25p・作者渡辺長男)がある。記念館には田中伯爵が収集した幕末の志士達の書状・掛軸などが展示されてある。勝海舟の「得失一時栄辱千載」などの文字は洒脱で風格があった。勝海舟は明治元年3月13日、14日江戸薩摩屋敷で西郷隆盛と会談。江戸を戦火から救う。その栄名千載に伝う。勝の弟子・坂本竜馬肖像画(公文菊僊作)もある。公文菊僊は坂本竜馬像を専ら描いた画家として有名である。田中伯爵には「維新風雲回顧録」があり、竜馬を論じている。島津斉彬の歌も佐久間象山の書もあった。もみじ平で昼食をとり、しばし休憩して家路に就く。この日、万歩計は10136歩を記録する。

 「春うらら気概問わるる志士の文字」悠々