愛知県瀬戸市の、猿投山麓にある海上(かいしょ)の森は、名古屋市近郊にある最後の広大な里山です。ここは東海地方にしか生息していないシデコブシをはじめとした貴重な生物が見られ、野鳥の種類も多い豊かな自然の宝庫です。現在、21世紀万国博覧会の開催予定地とされ、跡地利用としての都市化計画とともに、この場所の自然環境に影響を与えようとしている問題が起きています。ではどんな所なのか、トピックスなど踏まえてお届けします。

自然通信(2)
晩秋の海上の森

牧野 紀子(愛知県)

 秋の花も11月上旬までで、そろそろ終盤を迎えます。林道沿いで、ノコンギクや、ヤクシソウ(葉を噛んでみると苦いです)などキクの仲間が楽しめます。そして秋のフイナーレを飾るのは何といってもリンドウの仲間。センブリや所によりリンドウガひっそりと花を着けていました。渋さではアケボノソウが一番で、私の大好きな花の一つです。花の斑点を明けの空に残った星に見立てて名が付けられたそうです。

アケボノソウ
サネカズラ

 秋は実りの季節。ガマズミヤカマツカの赤い実は食べられます。以前に林道沿いが除草作業をされてしまいましたが、木の上に高くからまったアオツズラフジの紺色の実、ノブドウの紫の実を辛うじて見つけました。蔓になったサネカズラの実がいくつか吊り下がっているのを見るのも嬉しいものです。 

 今年海上の森では、黄葉が例年より一週間早く訪れました。11月9日に豊川市の森で見たコナラはまだ緑なのに、翌日10日に瀬戸のこの森に来てみたら丁度ピークを迎えようとしていました。(10日−15、16日辺りが見頃であったようです。)同じ愛知県内でも季節差が感じられます。アベマキの葉に付いている赤いものは虫が過ごすために作った虫こぶです。

ジョウビタキ(メス)
落ち葉

 冬鳥たちも外国より、国内の山地より、冬越しのためやって来ました。留鳥のシジュウカラ、エナガ、コゲラたちもお互いに群れを作り賑やかです。帰りがけに「ヒッ、ヒッ」という声にふと見たら、シベリア南部方面より渡ってきたジョウビタキ(雌)が止まっています。頭上に群れ飛ぶ虫を狙っているようです。お帰りなさい!

トピックス

レッドリストと海上の森

 今年8月末に環境庁による新たな植物版レッドリストが発表され、日本の自生する植物の危機がより深刻になって来ていることが分かりました。これにより、海上の森では絶滅危惧1A類(CR)1種、絶滅危惧2類(VU)13種、準絶滅危惧(NT)4種の計18種が生育していることが今までの自然保護団体の調査では明らかになりました。この中には東海丘陵要素のシデコブシやシラタマホシクサなども含まれています。

 愛知県でも2000年をめどに県内版の各生物のレッドデータ作成に取り掛かっている様ですが、レッドデータを作って終わりにするのではなく、例えば今分かっている貴重な動植物の生息地を積極的に保全したり、保護条例を設けるなどの対策を講じるなどしない限り、自然環境の危機的な状況は何も変わらないのです。

 現在万博のアセスについては、アセス新法の精神を取り入れ、代替地案を含み、関連事業のの新住宅構想、名古屋瀬戸道路の影響も予測した内容にしようとする試みが出て来ました。ところが一方、それより先に跡地利用計画としての新住宅計画が12月25日に瀬戸市の土地審議会にかけられる予定を皮切りに、99年の粗造成にむけての法的手続きを取り組む動きが急浮上してきています。依然海上の森の危機は去った訳ではないのです。

署名活動にご協力下さい!

 地元の自然保護団体が、「21世紀地球地球EXPO『愛知万博』の開催地変更を要望する署名(海上の森以外に変更を!)」の活動を来年の春までをめどに全国に向け行っています。自然環境を破壊しない代替地(瀬戸市の陶土採掘跡地や青少年公園など)で万博を行って欲しいという内容です。連絡先は下記の通りです。ご協力よろしくお願い致します。

連絡先
万博オンブズマン 愛知県名古屋市西区江向町1ー60
          TEL 052-524-1586(昼)
海上の森自然観察会 愛知県瀬戸市柳ケ坪町98ー5
          TEL 0561-84-2953(夜)

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