2011年(平成23年)9月20日号

No.515

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茶説

読書の秋『一葉落ちて天下の秋を知る』

 

牧念人 悠々

 読書の量が減った。月一回仲間5人と読書会を開いているので読むべき本については事欠かない。8月の日記を見ると読んだ本は門田隆将の「太平洋戦争最後の証言 零戦・特攻編」(小学館)部矢敏三遺歌集「山峡やまかい」(藍書房)こやま峰子編「10代をよりよく生きる読書・詩歌編」(東京書籍)佐伯泰英の交代寄合伊那衆異聞「変化」「雷鳴」「風雪」などである。9月には西舘好子さんの「表裏井上ひさし協奏曲」(牧野出版)鷲巣力著「加藤周一を読む」(岩波書店)をひもとく。社会部記者は広く浅く何でも知る必要があるといわれて「雑学」を心がけた。昔からノルマにしている「一週間1冊の読書」は辛うじて守られている。だが、好きな本しか読んでいないようである。

 友人霜田昭治君から日経新聞(9月8日付)に掲載されたエマニュエル・トッド氏の「アラブの春」の社会的背景と言う見出しの切り抜きを頂いた。フランスの歴史人口学者の氏は中東・北アフリカの民主化運動「アラブの春」について、必然的に発生した社会の変革との見方を示したと紹介されていた。彼は識字率の上昇と少子化により人類は確実に進歩するという。この進歩の移行期に戦争、革命、混乱などの危機が起きる。「近代化は単調な前進でなくまず伝統社会との断絶によるイデオロギー的な混乱が起こり、次に受胎調節により安定する」と説く。だからイスラム原理主義の暴力もまた移行期の危機であると指摘する。面白いのは1970年から通常では下がり始める乳児死亡率が上がり始めたので彼は「体制が最も弱い部分から崩れ始めた」と主張する。その予言は当たった。ソ連が崩壊したのは20年後の1991年であった。彼はすでにその著書「帝国以後」(藤原書房)などでそれらのことを明らかにしている。世界の変化は常にどこかで何らの形で表面に現れている。

 『一葉落ちて天下の秋を知る』―それは何よりも本を読むことである。