女性活用の戦略は成功するか
牧念人 悠々

 毎日新聞メキシコ特派員電として次のような記事が載った。(11月4日付)

 南米コロンビアでは左翼ゲリラとの内戦に手を焼いているらしい。そこで、軍の最高司令官がちょっとした奇策を考えついた。

 平和を望む女性たちを活用する方法である。つまり、ゲリラの妻、女性ゲリラ、麻薬マフィヤの女たちに、祖国の平和のために、男たちとのセックスを拒否してくれるよう声明を出したのである。内部でも批判があるようだが、何もしないよりはいいではないか。

 第二次大戦中、中国戦線で米軍は中国人売春婦を利用して日本兵にボツリヌス菌を服用させ、殺害する方法を考えた。

 小島襄著「戦史ノート」(文芸春秋刊)によると、ボツリヌス菌をまぜたゼラチンをつめたピンの頭ほどの小さな容器を生産、この容器を、ちょっと水にぬらして耳たぶのうしろにつけ、あるいは頭髪にしのびこませた中国人女性が日本兵の相手をしながら、耳または頭をかく風情で容器を料理に落下させればよい。死因は調査されても、症状は食中毒でしかない――。

 この作戦は失敗した。輸送係りの兵士が試しにロバに与えたところ平気だったので、効かないと思い、輸送された箱をすべて揚子江に投げ捨ててしまったという。

 ボツリヌス菌は猛毒で耳かき一杯で数十人を殺せるほどである。幸か不幸か、ロバはボツリヌス菌に対する耐性を持つ数少ない動物だそうだ。洋の東西を問わず、戦いに勝つために、軍の上層部はいろいろ考える。要は有形、無形の力を総合して、運用の妙をつくし、之を敵に向け、敵の力、戦意を破るにある。

 勝利の鉄則はあるのだが、戦争にしろ、内戦にしろ、戦場ではたくさんの錯誤がおきる。その錯誤を見通したうえの戦略、作戦であれば、勝利するであろう。


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