2010年(平成22年)12月1日号

No.487

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山と私

(69) 国分 リン

―  紅葉を満喫した「秋田駒ケ岳」―

 男女岳(おなめたけ)や男岳・女岳等の総称の秋田駒ケ岳は、秋田1の標高を(1637m)誇り、乳頭山とともに十和田八幡平国立公園南端の名山で、素晴しい眺望と、北日本1といわれる数百種の高山植物の宝庫と出ていた。18年前、山へのめりこみ始めた時、紅葉の素晴しい山を調べ、夢中で登り、紅葉の素晴しさが今も鮮明に残っていた。友のKさんが秋田駒はまだ登っていないと聞き、この紅葉を見て貰いたいと勧め、登ろうと決定した。

10月10日(日)晴れの特異日は、秋田新幹線の田沢湖駅を降りた途端に、雨が降り出した。最初の時から何度かお世話になっているペンション「クライマー」のご主人S氏が迎えに来て、「今日の山は雨でなんも見えねーがらやめな」と、S氏は駒が岳の主で、遭難や事故があると一番に連絡があると言う。環境庁から自然保護監視員を委託され、お仲間とこの一週間山道の確保と、下草刈りをしていたと聞いた。何日も山へ入る準備や、道具で30Kgを背負いとても大変と思う。S氏は例えば、高山植物も何処に何が咲くかも、よく熟知している。女性だけのグループのガイドは進んで引き受けると言う。前に旅行会社主催の60人のガイドを頼まれ、その時に天候の急変で一番怖い雷に合い非常に大変な思いをした話は、何事も無かったからできた話しだと思った。5,6人でも大変なのにその10倍の人数のガイドは恐ろしい。

「今日は紅葉狩をすべー」車を走らせ「大場谷地湿原」で停車。傘を差し遊歩道の木道を歩くと紫の小さな実が雫をつけきれいだ。サワフタギの実だよとおしえられた。生憎雨の中、山も紅葉も映えずとても惜しい。また車を走らせ、玉川温泉を目指す。時折日差しが出てこの玉川温泉辺りの紅葉は素晴しいが、3連休の中日で車と温泉客が多く、停車せず後生掛温泉経由で八幡平の頂上へ向うがここまで登るともうすっかり葉が落ちて初冬の様相、そこはまるで五里霧中、皆雨具をつけていた。籐七温泉前を通り、岩手県側へ出ると、日差しが出て紅葉が素晴しい。やっと岩手山も顔を出し、周辺の山々に虹が掛かり歓声を挙げた。八幡平スキー場まで来ると眺めも素晴しく、S氏に感謝し、水沢温泉郷のペンションへ戻った。久しぶりにお世話になるのに奥さんも暖かく迎えてくれたのも、東北人の情の厚さだと感じた。夜、最初に駒ケ岳を登った時の写真を見せられ若い自分に驚き、懐かしくその当時の山への思いを再認識した。

10月11日(月)曇り 5時に朝食の準備をしてくれた奥さんに挨拶して出発。八合目避難小屋までの道路は車規制が敷かれ、S氏がアルプこまくさまで、くれぐれも熊注意といいながら車で送り、6時30分発一番のバスで八合目まで登った。この時間バスは山へ向う人で満員だった。避難小屋へ寄ると朝食を取っているグループが数組居て賑やかだ。準備を整え7時いざ出発。よく整備された道を一登りすると片倉展望台に到着、ここから田沢湖、乳頭山・森吉山の眺望が素晴しいらしいが今日は雲の中。雨が降らないだけラッキーと思い、さらに山腹をまき先へ進むとぱっと前方が開け木道になり、阿弥陀池が見えたり、霧に隠れたりは幽玄の世界のようだ。池畔奥に阿弥陀池避難小屋が見え、男女岳と男岳への分岐の標識へ8時20分到着。とりあえず最高峰の男女岳へ向う。石畳をきちんと敷き詰めたような道を登り、階段状に造られた道を喘ぎ登ると男女岳頂上(1637m)へ9時到着。霧が晴れるのを待つが諦めて、阿弥陀池まであっという間に降り、横岳(1583m)9時50分到着。ここまでは大勢の登山客で賑わっていたが、焼森(夏はコマクサの群落地)まで歩くともう私たちだけの貸しきり状態になり、一生懸命湯森山を目指し歩く。11時湯森山(1471.7m)到着。

この時間帯から青空が見え、霧が晴れたら素晴しいご褒美を頂いた。周囲の山が見え思わず大声で「きれいだね。ありがとう」と叫んでいた。下山コースの田沢湖国民休暇村分岐のベンチへザックを置き、笹森山(1414m)11時30分到着。眼前に広がるいろんな黄色の中に赤や緑色が映え素晴しい。乳頭山もその名のようにはっきり、1目で分かり楽しい。10分ほどジーッと眺めていた。この下山コースはブナの原生林が続き、静かな山歩きを楽しめるとガイドブックに書かれていた。ブナの原生林は熊の生息地だから鈴か笛でいきなりの衝突は避けたほうが良いと、S氏に教えられていた。

Kさんが笛をリズムを取りながら吹き、気分の良い黄葉の光の中歌を歌いながら貸切のコースを歩く。本当に清々しく、満足し13時30分田沢湖国民休暇村へ到着し、今回の秋田駒ケ岳の山行は終えた。深田久弥氏の「日本百名山」の後記のなかで「東北地方では、秋田駒ケ岳と栗駒山を入れるべきであったかもしれない」と書いている。

花の名山「秋田駒ケ岳」来年6月末にタカネスミレが全山黄色にするのを見にこよう。