2010年(平成22年)8月10日号

No.476

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花ある風景(391)

並木 徹

 奈良の古寺と仏像を見る

 
 平城遷都1300年を記念した特別展「奈良の古寺と仏像」―会津八一のうたにのせてーを友人、霜田昭治君に誘われて見る(8月2日・三井記念美術館)。展示品は金銅仏14点,会津八一関係資料22点、仏像32点、工芸品15点(十三重石塔納置品=6点=を1点と数える)。仏像が関係する奈良の古寺は東大寺、西大寺、唐招提寺、薬師寺、長谷寺、室生寺、当麻寺、橘寺、法隆寺、大安寺、秋篠寺、元興寺12寺に及ぶ。圧倒される。贅沢な展覧会でもある。各展示室の入り口に会津八一の歌が紹介される。「うすれゆく かべゑのほとけ もろともに わがたまのをの たえぬともよし」

 すべての展示品の感想を述べる余裕はない。強く興味をひいた仏像を取り上げたい。重要文化財・東大寺所蔵の「五劫思惟阿弥陀如来」(製作・鎌倉時代・13世紀)頭が毛糸の帽子をかぶったように異形である。五劫の間(2,1億6千万年)考えたので髪の毛が伸びてしまったという。両手を合わせた坐像である。霜田君はおかっぱ頭に岸田劉生が描いた「麗子像」を思い出すという。確かに似ている。思惟していたわけではないがここ10数年、自分で頭髪を刈っていたのをこの日、「1000円理髪店」で散髪したばかりであった。阿弥陀如来は念仏が本願である。南無阿弥陀仏を唱える。

 次が唐招提寺の「如来形立像」(木造。平安時代・9世紀)。「唐招提寺のトルソー」と有名である。他の仏像と比較して明らかに雰囲気が違う。頭部、両手、両足先がないがどこか美しく感じる。トルソーはギリシャヤローマの遺跡から頭や手足を失った状態で発見された彫像を淵源する。会津八一はここにギリシャ美術の影響を見る。カタログには「左手には薬壺を持ち,右手は施無畏印を結ぶ薬師如来か、または両手に宝珠と錫杖を持つ地蔵菩薩像が連想される」としている。

「観仏三昧」と言う会津八一に書『学規』一幅がある。(新潟市会津八一記念館蔵)
「一 ふかくこの生を愛すべし
 一 かへりみて己を知るべし
 一 学芸をもって性を養うべし
 一 日々真面目あるべし」

 私は「学芸をもって性を養うべし」に注目する。性を養うことによって長生きもできると信ずるからである。毎日新聞に入社した時、先輩は美術展を見るべしと教えた。62年前の話である。五劫に比べれば一瞬である。