2010年(平成22年)6月1日号

No.469

銀座一丁目新聞

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茶説

責任の取り方
 

牧念人 悠々

 大仏次郎は作品「帰郷」の中で主人公にこう言わせている。「こう、なまぬるく好い加減のところで折り合うのが日本人の流儀なのかもしれないが、私はそうしない。こうと思い立ったことは終点まで追い詰めないと、後味が悪くて眠れなくなるたちだ」。このくだりは戦時中刑務所で若い憲兵から拷問を受けた主人公が戦後その憲兵の男を見つけて問詰める台詞である。個人に限らず、日本人には上から下まで、政治の世界から企業の世界まで事が起きてもその責任をいい加減にしてしまう国民性がある。
 うそつく子供には「閻魔様に舌を抜かれるぞ」と戒める諺がある。狼少年の話もある。人格形成の80パーセントは子供のうちにしつけられるという。大人になってから無理であろう。古今東西嘘つき政治家の末路ほど哀れなものはない。
 普天間基地移設問題で「国外、最低でも県外ヘ」と8ヶ月も迷走の果て「辺野古」へ回帰した鳩山由紀夫首相に対して退陣を求める声が58パーセント、退陣する必要がないが40パーセントもある(毎日新聞世論調査)。日本人はまことに鷹揚である。耳さわりのよい言葉にだまされやすい。米軍の抑止力を考えれば、民主党政権が発足当時から普天間基地を「国外」はもちろんのこと「県外」移設するのは難しかった。それを「沖縄県民の負担軽減のため」と称して県外移設に固守する。その「沖縄の負担軽減」の言葉にいとも簡単にだまされる。現実の世界情勢、アジア情勢の下ではその実現は出来ない。本人が言うことは沖縄県知事なみの発言である。日本の首相であることを忘れている。安全保障、国防という国益の上から判断する必要があった。その首相が今度は「しっかりとした政治をやりたい」と、なお続投する構えである。嘘つきの言うことをだれが信用するというのか。この人は先見性もなければ想像力もない。すべて場当たり的である。その発する言葉が軽い。
 戦後65年間も平和だというので日本はあまりにも安閑としすぎる。韓国の哨戒艦沈没事件は北朝鮮が意図的に実行したとみられている。自ら攻撃しておきながら事件は韓国のデッチ上げという。こういう国がすぐそばにいる。自衛隊の最高司令官でもある首相がその事をわきまえずいたずらに手をこまねいているのは国を危なくする何ものでもない。
 鳩山首相の下では普天間基地を「辺野古」に移設できない。強行すれば血の雨が降る。遅まきながら6月2日、辞意を表明されたのは良いことであった。昔の武士であったならもっと早く切腹していた。責任の取り方は難しい。