2010年(平成22年)4月1日号

No.463

銀座一丁目新聞

上へ
茶説
追悼録
花ある風景
競馬徒然草
安全地帯
いこいの広場
ファッションプラザ
山と私
銀座展望台(BLOG)
GINZA点描
銀座俳句道場
広告ニュース
バックナンバー

茶説

育児は母親の手でなすべし
 

牧念人 悠々

 筑波大学名誉教授、村上和雄さんが産経新聞のコラム「正論」で世界20ヵ国の青年に「親を尊敬するか」の問いに世界の平均が83lであるのに日本はなんと25lであると書いておられる。「親孝行」の美徳はもはや昔の話となった。戦後、親の権威が失墜してから久しい。新聞記者として仕事に精を出して「家を省みなかった父親」の私は忸怩たる思いに駆られる。妻のおかげで一男一女は結婚もし、人並みの生活をしている。我が家のこの質問に対するパーセントは70を超えてよいであろう。
 子どもが親を尊敬せず悪の道に行くのは、親の言うことと親のすることとの間にギャップがある場合だ。その場合、子どもがひねくれて悪くなるのである。勉強嫌いの私は子どもには「勉強をせよ」と一言も言わなかった。二人とも一浪した。その一年間、「どんな本でもよい。100冊の本を読め。そのお金は出してやる」といって実行させた。
 村上さんはこの論文の中で「最近の研究によると3歳までの間が脳・神経系や情緒・生活慣習の発達上重要な時期であることが明らかになった」と書く。この時期に「誰がどう世話するか」は重要な問題であると指摘する。昔から「三つ子の魂百まで」という。教育者ペスタロッチも「最大の教育者は母親である」といっている。幼児に接する母親の存在が極めて大きい。子どもは3歳までに母親の愛情いっぱい育てられると、すくすくよい子に育つ。幼児の脳の神経細胞は母親の愛情によって遺伝子の働きが「オン」となりよい栄養が吸収されすくすくと育つからである。さらに胎児は母親の感情や行動も受け止めていることも分かっている。とすれば子育てには母親の存在が極めて大切である。だから私はスポニチの社長時代、女子社員の育児休暇の期間を3年と決めた。だが、今だに3年間、育児休暇を取った社員は一人もいない。
 3月11日の「銀座展望台」に次のように書いた。

 ▲「東京都文京区長(44)約2週間の育児休暇をとる意向のようである(毎日新聞)。男性首長としてはじめて。外国では閣僚級でも育児休暇を取る例がある。
 私は区長の職責の重さと育児を比較考量して判断する。災害など大事件が起きた際、区長が現場にいるといないとではその采配に差が出てくる。救われる命も救われない事態も起こりかねない。区長の職は軽いものではない。
 上に立つ者は常に「万一の事態」を考えるべきである。「区政」は「育児」より私は大切だと思う。
 育児休暇をとりたければとればよい。提案するとすれば、育児休暇の期間は5日ぐらいでどうか。
 私なら育児休暇は取らない。一般の職員よりも高い給料を頂いているから・・・」

 この気持ちは変わらない。実は父親が赤ん坊のそばにいても何の役にも立たない。役に立つのは妻の手伝いだけである。妻こそできるだけ赤ん坊のそばにいるべきである。これは人間のDNAの働きからいえることである。自然の摂理である。人間の成り立ちから「育児は母親の手で」と言うことである。育児に関しては母親の重要性を強調したい。