2010年(平成22年)2月10日号

No.458

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茶説

鳩山首相は泣いて馬謖を斬らなかった

牧念人 悠々

 現職の国会議員を含む秘書3人が逮捕、起訴されながら本人は起訴を免れた小沢一郎民主党幹事長に対して民主党鳩山由紀夫首相(総裁)は続投を認めた。2010年2月8日、首相官邸の出来事である。この時点から民主党の凋落が始まる。後世の史家は「鳩山首相泣いて馬謖を斬らなかった。ここが鳩山政権の落ち目の始まるであった」と評するであろう。
 中国三国時代の話である。諸葛孔明に重用された参軍・馬謖は街亭の戦いで、諸葛孔明の命令に違反して山上に布陣した。このため魏軍に山の下を包囲され飲み水を断たれて蜀軍は大敗、全面撤退を余儀なくされた。諸葛孔明はやむなく泣いて馬謖を斬罪に処した。自らも三階級下の右将軍に降格した。実力者でも不届きな振る舞いがあれば断固処分する例へ話によく用いられる。組織の上では部下に非違があった場合、長が判断し処分を決断する。やめるかやめないかを本人に任せるものではない。それを鳩山首相は「やめるかやめないかは、本人次第」といって他人事のように言うが、上に立つ者の言うことではない。これを無責任、優柔不断というのである。
 鳩山由紀夫首相の気持ちがわからないではない。7月の参議院選挙を考えれば小沢幹事長の豪腕がぜひともいる。政権運営はさらに安泰になる。そこに落とし穴がある。庶民は「政治と金」に極めて潔癖である。幹事長が「不起訴処分」になっても小沢幹事長の「お金と不動産購入」に胡散臭さを感じている。新聞・テレビの世論調査では「小沢幹事長の辞任」を求める声が70パーセントを超える。鳩山内閣の支持率も始めて不支持率のほうが上回った。総選挙で動向が注目される浮動層が明らかに鳩山政権にそっぽを向け始めたのである。
 アメリカでは民主党の有力者の不祥事がないのにかかわらず、オバマ大統領の人気は下降気味である。成立を豪語していた「国民皆保険法」は不成立に終わった。またCO2削減法案は下院をパスしたものの上院の賛同を得る公算は皆無という。景気振興法の効用も芳しくなく、失業率は10パーセントを超えている。外交面では「核廃絶・核軍縮」を唱え世界を沸かしたが「協調・対話」路線は必ずしも成功していない。北朝鮮、イランにはかえって乗ぜられている。
 優柔不断の鳩山首相に待ち受けているのが5月までに結論を出すといっている「普天間基地移設問題」である。これは日米合意を守るほか選択肢はない。これが命取りになる恐れがある。安保条約、日米同盟、東南アジアの集団安全保障、極東有事などの観点から考えて「国外」「県外」移設は現実には実現不可能である。中曽根康弘元首相が鳩山由紀夫首相を評して「鳩山由紀夫は政治を数学的に考えるところがある」といった。とすれば、連立方程式で「普天間基地移転問題」をどのように解くのかみものである。