2009年(平成21年)12月1日号

No.451

銀座一丁目新聞

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山と私

(60)
国分 リン

――山が悲鳴を!「鳥海山の紅葉」(3度目の挑戦)――

 歳時記によれば、秋は「山粧う」。紅葉を満喫する山へ登りたいと考えていた時、今夏、北アルプスを2人で登った友が「どこか山へ登ろう」彼女は秋田の湯沢出身、「鳥海山はどうかしら」「高校時代に登ったきりだから、登ろうか。」私は10年ほど前の8月初旬に会社の同僚達と御浜小屋へ泊まり、翌日どしゃぶりの雨で撤退。7年前の秋に鉾立から早朝登ったが8合目から雪が深く危険なので撤退したが、途中の景色は赤や黄色に染まり、山がまるで化粧をしていた。この景色が強く印象に残った。
 雪を心配し「ガイド登山にしよう。」友に了解を得て、スポニチ登山学校の片平先生にお願いして、行程を決めた。今回は最短コースの湯の台から登ることにし、酒田までの夜行バスを手配し、「湯の台鳥海山荘」の予約を友が取り実行した。
 10月10日(土)東京駅丸の内北口発23時15分酒田行き夜行バス乗車。
 10月11日(月)酒田バスターミナル7時着 バスの中、6時頃目覚め、お天気が心配でカーテンを開け青空に安心した。朝の酒田の町はひっそり、歩いている人もいない。予約していたタクシーに乗り、始めての酒田の町を横切り30分で、500m地点の今夜の宿「鳥海山荘」到着。登山に不要なものをデポして、またタクシーで車道終点へ到着。8時20分であった。駐車場には5台停車していた。すでに山へ入っている人たちがいる。きれいな避難小屋で友の手作りの朝食を食べ、8時45分登山開始。石が敷き詰められた登山道は歩きにくい。紅葉は期待したほどではない。9時10分滝の小屋5合目1270m地点到着、外観は小さいが70人収容と地図に出ていた。ここから八丁坂の上り、夏であれば、この周囲は一面のお花畑になるとガイドブックに出ている。河原の道を登り、私たちだけでは迷いそうな道を片平先生が的確に案内し、ひたすら登ると尾根道に出て、遥か眼下に日本海・酒田湾が見え冷たい風が吹き抜け、周囲の景色も冷え冷えとしてきた。10時30分河原宿7合目1700m地点到着。10分ほど休憩後、7月にはニッコウキスゲの群落に心字雪と呼ばれる万年雪を見ながら岩がごろごろの道を登り、雪解けの水が流れる泥道を登っていると、下山してくるパーティに「もう頂上まで登って下山ですか」と質問すると、「いや登山道の岩に氷が張り付き雪も凍っていて危ないので途中で戻ってきました。」それを聞き、不安になったが、片平先生が「とりあえず薊坂の入口まで登りましょう。」霧雨から霰のような冷たい雨になり、「雨具と防寒対策をしてください。」ちょうど薊坂入口の標識があった。雨具を着けさあ気合を入れて歩き出そうとしたら、10人の登山者が「視界無し、雪が降り危ないから無理して登っても何もならない。」と戻ってきた。もう頂上まで90分地点、でも黒い雲に蔽われ、天候は最悪で回復は望めなかった。「この天候で無理をして登っても何も見えません。ここで戻りましょう。」片平先生の断に私たちは冷たい霙の中、半ばほっとして下山開始、河原宿に戻ると地元の男性10人が芋煮会をしていた。私たちも温かいお茶で休憩したが、直ぐ冷え込み、早々に下山した。登る時に見えた景色もすっかり霧の中、滝の小屋へ戻り、周囲を見渡すが紅葉は葉が茶色で何かおかしいし、とてもきれいとはいえない。車道終点の避難小屋でタクシーを呼び、雨具を片付け、昼食を済ませ、タクシーで湯の台温泉「鳥海山荘」へ3時に到着。これで今回も鳥海山の頂きには登れなかった。来年の夏、花の時期に今度こそ絶対登ろうと、決意した。
 この宿の空きスペースには白旗史朗氏の季節を変えた鳥海山の素晴しい写真美術館になっている。紅葉の写真も素晴らしい。同時期なのにこの宿の周囲の紅葉も冴えない。
 翌日山荘の車で酒田駅へ向う途中「実は昨年から紅葉がおかしいのです。ナラ枯れ被害に加え、ブナの葉枯れのダブルパンチに襲われ、紅葉前に葉が枯れてしまうのです。
 原因ははっきり判らないのですが、温暖化の影響と思われます。」
 家に帰り直ぐネットで調べると驚くべき事実が分かった。東北森林管理局の観察日記や、地元紙に記事が載ったブナの葉枯れやナラ枯れの事実を知った。ブナの葉枯れの原因は体長約6.5o「ウエツキブナハムシ」の幼虫がブナの葉を食い荒らす為である。8月下旬には葉を茶色に変色させ、実を熟させない状態にする。しかし木は枯れることなく2,3年で自然に収まると書かれていたが、月山は既に3年目の被害にあっている。
 一方ナラ枯れは「カシノナガキクイムシ」は昔から日本にいる昆虫で、ナラ枯れも古くから知られ、でも激甚被害が発生した主な理由はナラの木が利用されなくなって高齢化・大径化したことが大きいと考えられている。「カシノナガキクイムシ」が好む樹齢50年以上の大木は、昔は薪や炭として使われていた。しかし60年代以降に燃料が石油中心に移ると利用されなくなり、近年は「カシノナガキクイムシ」の繁殖に適した老木に成長している。それに地球温暖化の影響で活動範囲が広がったとの指摘もあると書かれていた。ナラやブナが枯れたら自然体系が崩れ、水害や獣害の恐れもあり、山の景観を著しく阻害することになる。
 大好きな東北の山々、森の危機を知らせたい思いが募り、鳥海山にちなみここに記す。