2009年(平成21年)4月10日号

No.428

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茶説

オバマ大統領の広島・長崎訪問が
最大の核廃絶政策だ
 

牧念人 悠々

 オバマ米大統領がプラハでの演説で「核兵器を使用した国として核兵器廃絶は道義的責任である」と発言したのはきわめて異例であった(4月5日)。このニュースを見て私は東京裁判で梅津美治郎被告を弁護した米人弁護人、B・ブレークニーさんのことを思い出した。ブレークニーさんはスチムソン陸軍長官が原子爆弾使用の決定したことを証明する証拠を提出しようとしたことがある。原爆使用はハーグ条約第4の陸戦法規違反で、最大の戦争犯罪である。この証拠が提出されていたら世界的に大問題となるところであった。裁判長はこの証拠申し出を却下してしまった。今でこそスチムソンの原子爆弾使用は世間では知らぬものはないが当時はどこで決定されたか誰も知らなかった。ブレークニー弁護人は本国政府に反しても弁護士の任務を尽くすことを躊躇しない気迫を示した(清瀬一郎著「秘録東京裁判」中公文庫より)。私はここに「アメリカの良心」をみた。
 もともと原爆という大量破壊兵器を使うことには米国国内でも反対意見が少なくなかった。ポツダムで意見を求められたアイゼンハワーは「アメリカが世界最初の国として、このような兵器を使うべきではない」と進言している(デイビッド・ルー著「アメリカ自由と変革の軌跡」日本経済新聞出版社)。
 今回のオバマ演説は「核兵器に依存しない安全保障体制」を示したものとして非核保有国から歓迎され、核保有国からは冷静にみられている。北朝鮮が核を保有し、イランが核兵器開発を進めている時、それなりのメッセージを与えたといえるが、テログループに核兵器が渡る恐れは十分ある。そうなれば必ず悲劇が起きる。
 1962年10月、ソ連が射程2200マイルの攻撃用ミサイルをキューバに設置するのを知ったケネディ大統領は海上封鎖を断行しフルシチョフ・ソ連大統領に強硬に撤退を迫った。交渉の結果キューバからミサイルは取り除かれた。核戦争の危機を寸前で防ぐことが出来た。日本はまさに同じような状況に置かれている。北朝鮮はすでに核を保有し、日本に届くミサイルを持っている。米国であれば直ちに北朝鮮のミサイル基地に爆撃を加えているであろう。
 オバマ大統領の「核廃絶演説」が本心であるならば、この秋来日中に必ず広島、長崎を訪れ、原爆の悲惨さを肌身で知ることだ。それが最大の核廃絶につながる政策である。行動こそ有効な政策実現である。