2009年(平成21年)2月20日号

No.423

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茶説

世界同時不況を生き抜く
 

牧念人 悠々

 日本は戦後最大の危機にさらされているという。昨年の10月から12月期の実質国内総生産(GDP)が年率換算で12・7l減少したからである。マイナス幅は第一次石油危機に見舞われた昭和49年1月から3月期の13・1lに次ぐ記録である。
 新聞は連日のように解雇、倒産、不採算部門の切り売りなどを伝える。自社製品を社員に買わせる運動を始めたいじましい企業もある。こんなニュースをみて庶民の懐はますます堅くなる。
 ところで物価はどうか、昭和5年(世界恐慌)昭和49年(石油ショック)平成20年と比較してみる。
 
 

昭和5年

昭和49年

平成20年

米(10Kg)

2円30銭

2,500円

5,000円
(魚沼産コシヒカリ)

牛乳(200cc)

6銭

47円

180円
(ワンパック)

出産費

25円

15万円

30万円

映画入場料

5円

957円

1,800円

日本酒2級(1升)

1円85銭

930円

2,000円から1万円
(平成4年から2級酒なくなる)

 昭和49年の流行語は「便乗値上げ」「狂乱物価」「千載一遇」「それはいえる」「晴天の霹靂」「ゼロ成長」「諸悪の根源」「節約は美徳」「日曜大工」「ベルばら」「金脈と人脈」。
 平成20年度はまだ記憶に新しい。「アラフォー」「居酒屋タクシー」「名ばかりの管理職」「蟹工船」「事故米」「後期高齢者」「あなたとは違うのです」「サブプライム」。35年前に比べると、昨年の流行語は暗い言葉が多い。「上野の413球」ぐらいが明るい言葉である。
 物価が大体2倍に上がっている。アメリカ並みの市場原理主義が猛威を振るってこの20年ばかりで、「非正規労働者」や「派遣契約労働者」が増加、年収200 万円以下の貧困層が増え、公的の援助を受ける「生活保護家庭」が120万世帯を突破している。この1年さらに激増する恐れがある。日本の企業内では「家庭的な温かさ」なくなってしまった。個人の自由を認め、効率、能力を余りにも重点を置きすぎた結果である。
 辞任した中川昭一財務相・金融担当相の先進7国財務相・中央銀行総裁会議での記者会見にしても、昔の政治部記者なら中川財務相のおかしな様子をみて即座に 「大臣の体の様子が悪いようですから引き取りください」と温かな手を差し出す。また傍にいた日銀総裁にしても中川大臣の異変に真っ先に気がついているはずだから「大臣の様子がおかしいので、できれば私が変わってお答えします」とかばう機転を持っていた。現代の自由主義は隣人同士の思いやりも、惻隠の心もどこかへ押しやってしまった。これが日本の「政治の風景」であり「社会の風景」である。
 昭和49年の流行語のひとつに「諸悪の根源」がある。「世界同時不況の諸悪の根源」は「市場原理主義」である。確かに自由の理念は尊重すべきであるのは論をまたない。しかし「市場原理主義」が今回の「100年に一度の津波」と言われる金融危機 を招き、「格差社会」を現出し、日本社会の持つ「温かさ」や「家庭的雰囲気」を消滅するとすれば厳重に管理しなければならない。日本は何よりも景気対策を実行に移すことである。また「節約は美徳」と言われたが、今回は国民の消費をあげるために「乱費は美徳」ということになるのだろうか。「定額給付金」は全部使っても後はやはり「節約は美徳」でいくのが賢明であろう。