2008年(平成20年)8月10日号

No.404

銀座一丁目新聞

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茶説

皆様の「ご氣嫌を伺わない」
 

牧念人 悠々

 その内閣が在位71日の短命に終わった石橋湛山首相は昭和32年1月、日比谷公会堂での国民向けの演説の中でこう言った。「民主政治は往々にして皆様のご氣嫌をとる政治になる。これが民主政治を滅ぼす原因になる。私は皆様のご氣嫌を伺いことはしない。随分皆さんに嫌がられることをするかもしれないからそのつもりでいてもらいた」。それから半世紀。この政治家の気概はどこかへ消え失せた。2日発足した福田康夫改造内閣は、自らを「安心実現内閣」と名付けた。内閣支持率20パーセント前後を低迷するとあってはやむを得ないかもしれない。私なら留任した高村正彦外相の座右の銘「政治家は一本のろうそくたれ」をとって「一本のろうそく内閣」と名付けたい。背水の陣の福田政権が崖っ淵に立たされた今これほどふさわしい名はない。反軍政治家、斎藤隆夫の言葉である。昭和11年の特別国会で粛軍演説を行って軍部を激昂させ、昭和15年には日中戦争の指導混迷を批判して除名された。「政治というものは自分の身を焼き焦がして世の中を照らすべきだ」というのである。
 今、政治家に必要なのは右顧左眄することなく、独立国家として激変する世界情勢に対応して次から次へ政策を実現していく気概と実行力である。全閣僚が自分の身を焼きつくして事に当たれば道はおのずから開けてくるであろう。
 それにしても麻生太郎幹事長はよくも「福田丸」に乗り込んだものだ。沈み行く自民党に党員として坐してみているわけにはいかなかったのであろう。話は抜群にうまい。演説にマンガの話がポンポンと飛び込む。「話を聞く後期高齢者」には理解しがたい。だが彼の国に寄せる熱情は感じることができる。若者にも老人にも人気がある。昭和5年生まれだが、おばあさんから教わったという「教育勅語」を今なおそらんじている。麻生太郎以上の年齢の閣僚は6人いるがおそらく一人も「教育勅語」を覚えていないであろう。麻生は「明治の心を持った、男気のある男」である。新聞の内閣支持率の世論調査を見ると「麻生幹事長効果」が認められる。初入閣の中山恭子、拉致問題、少子化担当相には期待したい。ウズベキスタン大使時代に起きたキルギスでの日本人拉致問題で見せた武装勢力との粘り強い交渉、関係国への気配りは、いまなお高く評価されている。声はやさしいが一本筋が通っている。閣僚中47歳の最年少者が2人いる。林芳正防衛相と野田聖子消費者行政、食品安全担当相である。林防衛相は積極的に発言せよ。「日本の主権や権益が侵されたとき紛争を恐れることなく自衛力を発動せよ」。お金で国の安全を変えるものではない。来年1月で期限切れとなる「新テロ対策特別措置法」は3分の2の可決を前提として対処すべきである。今年5月24日東大5月祭で田母神俊雄航空幕僚長が東大安田講堂で講演したのは、戦後初めての出来事。制服の将官が東大で講演するのは戦前東条英機大将が首相の時演説して以来である。このニュースを新聞が大きく掲載しないのはマスコミの怠慢もさることながら防衛相のPR不足も否めない。野田聖子は郵政相に次いで2度目の入閣だが、解決の兆しを見せた中国のギョーザ中毒事件については消費者の代表として中国側にはっきりとものを申せ。いつまでも犯人不明で迷宮入りさせるべきものではない。日中友好のためにも早く解決させるべき事件である。「相手の嫌がることをやる」のが国益である。
 一本のろうそくの灯、風前のともしびとなるか、焼き焦がすかは全閣僚の心がけ一つににかかっている。

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