2008年(平成20年)7月1日号

No.400

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茶説

「後期高齢者医療制度」が生んだ一家4人殺人事件
 

牧念人 悠々

  「後期高齢者医療制度」がついに殺人事件を引き起こした。そうとしか理解できない。私は6月25日のブログで次のように書いた。
▼77歳の男、妻(75)長男(49)その妻(44)孫(4)をハンマーで惨殺する(千葉県柏市)。80近くなってたどり着いた先が「地獄」とは、余りにも悲惨だ。
妻は男が定年になれば「亭主在宅症候群」にかかり、今年はさらに「後期高齢者医療費天引き症候群」と長たらしい病気に襲われている。
少しは妻の立場を理解してやれ。理解できなければ独立独歩自分の道を選べ。妻は妻、自分は自分でお互いに楽しめば良かったのだ。
妻への殺意は3度抱いたという。抱いても発散方法が有ればなんと言うことはない。芝居、映画、音楽会、展覧会、図書館至る所に共感し、感激する場所がある。殺意を鎮めるところはある。
柳生心影流の極意は「眼」「足」「胆」「力」という。この極意を会得するだけで後2、30年かかる。考え、実行するだけで楽しいではないか。
要は人生に対するその人の構えで一生が決まる。なるようにしかならない人生だ。構えだけでも大きく構えよう。
 犯罪に社会的要因がどれほど関わりが有るか判断が難しい。すべてを社会に責任を負わせるつもりはないが、人間が社会で生活する以上おおかれ、すくなかれ関わりがある。その比重をどこまで認めるかであろう。問題は今年になって「後期高齢者医療制度」で国民健康保険料が年金から天引きされるようになって「後期高齢者」の家庭生活が一挙に暗くなった。すでに「亭主在宅症候群」にかかって、亭主が何もせずに傍で一日中いることに、いらいらしていた奥さん達に、さらに追い打ちを掛けたのが「後期高齢者医療制度」である。これまで自発的に払っていた「国民健康保険料」が「年金」からいきなり天引きされたのだ。自発的に払うのと天引きにされるのでは「後期高齢者」にあたえるショックは大きい。名付けて「後期高齢者医療費天引き症候群」。これは奥さんだけでなくご亭主にも罹った。二人とも“病気”になるのが異常事態である。
77歳の男が奥さんにつらく当たられたといって簡単に爆発するものではない。引き金を引いた要因がある。考えてみよ。老人は定年後、多くのものが孤独である。疎外感を持つ。ひがみやすい。連れ合いとの摩擦・口喧嘩は日常的になる。そんなところに、持ち込まれた「年金からの天引き」。介護料もすでに天引きされている。物価高の昨今、生活はさらに苦しくなるばかりである。頭に来るではないか。77歳の男に「火」をつけたと言ってもおかしくない。
ところで「殺意」を鎮めるのはひとえにその人の性格による。だが、殺人の誘発は社会的要因といわざるを得ない。今の日本の政治は一体どうなっているのだと言いたくなる。

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