2007年(平成19年)11月1日号

No.376

銀座一丁目新聞

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山と私

(37)
国分 リン

−昨年秋のリベンジ「朝日連峰と鳥原小屋」−

 昨年10月紅葉の朝日連峰は台風予報の中出発し、雨のなか一縷の望みを持ち登ったが、翌日は強風が吹き荒れ縦走は危険なため、ピストンで同じ場所へ戻り急遽地元の大井沢の民宿へ泊まった。風の合間に見えた紅葉と、瞬間の虹に感動し、東北の名山・朝日へ今年も登りたくて申込をした。
 9月15日(土)晴れ 昨夜10時に池袋を出発、熟睡後の月山インターで地元の鈴木先生が皆のバスに乗り込み、いよいよ登山口の日暮沢小屋へ朝6時到着。鈴木先生が準備された避難小屋泊りの食糧15人分を、分担のアルファー米二袋にプラス醤油をザックに詰めいざ出発。気持ちの良い樹林帯の急坂を登る。昨年の悪天と違い景色を見ながら、鈴木先生の足は軽やかでいつもるんるんと私達に声を掛けるが、登りはきつく声も出ず、喘ぎながらもようやく清太岩山1465mへ標高差840mを登り休憩、とても眺めがよく以東岳から寒江山の主脈の銃走路が見え懐かしい。尾形先生のグループを待つがなかなか来ず、鈴木先生が心配で走って戻り、ザックをひとつ担いで足が攣った人がいて遅くなると、聞いた瞬間私も「足が攣りそうなので先に歩きます」と歩き出した。鈴木先生のグループは私を除き皆若く達者な人たちなので少しピッチを上げた。結果的にこれが良かったと思う。ユーフン山1565mの辺りからマツムシソウの可憐な紫の花を見つけ、一気に疲れを忘れ、花を追う。白山イチゲの白い花をこの時期に多く見ることが出来た。やはり陽気が熱く、夏の名残と思う。最後の竜門山1688mへ登ると小屋が眼下に見え、ゆっくり東北独特の山の連なりを目に刻みながら12時30分にとてもきれいな竜門避難小屋へ到着、小屋の主のヒマラヤも登られた遠藤氏は別の山へ出かけられ、鈴木先生のお友達が代役を引き受けられていた。紅葉にはまだ早かった。小屋前のベンチで竜門山の方を見ると岩崎先生が前後にザックを担ぎ降りてきたのは一時間後、皆無事到着。よかった!避難小屋での醍醐味は夕食の献立にある。山形自慢のヒキズリうどん(器に納豆・生卵・鯖水煮の缶詰・ねぎを合え各自好みの味にして、茹で上がったうどんをそのまま鍋から器に引き入れて食べる。)体が温まりとても美味しい。先生方が重いうどんや材料を担ぎ上げたご馳走に感謝である。
 9月16日(日)お湯を沸かしアルファー米に入れ缶入り味噌汁を各自の器に入れこまめに準備する姿に山男はまめでないとなれないなと感心する。風除けに雨具を着けいざ大朝日岳(1870m)を目指す稜線漫歩,昨年のヒナウスユキソウ
の大群落やヒメサユリの見事なまでの咲きようを思い出しながら歩いていると、ヒナウスユキソウの花の名残があちこちにあった。西朝日岳(1813m)へ到着。ここからの大朝日岳の眺めは今回も望めず。西朝日の三角点はもう10m先にありますが、藪の中でいけませんと鈴木先生に教えられた。このころから黒い雲が湧き出し雨を降らせた。鈴木先生とSさんは雨具を着けていないので申し訳ないが先に走って行きますと、すぐにガスの中に姿が消えた。結構な大降りの雨の中小屋が見えた。私は昨年も雨の中大朝日岳に登っているので、今年は小屋へ上がって休んで待つことにした。板場の上に発砲スチロールを置き、銀マットが敷いてあり、これがとても暖かく心地よい。30分ほど皆が駆け下りてきて、鈴木先生の鳥原山(1429.6m)経由で鳥原小屋を目指す。昨年見たヒメサユリの群生地は7月中旬に来年花を咲かせるために刈取ってしまうと鈴木先生に教えられ目をこらしても判らない。ふと気がつくと雲の合間から太陽が顔を覗かし青空も出て明るくなった。右手前方は切り立った一枚岩・熊超から急騰を登ると小朝日岳(1647m)四方の景色が見えるようになり、古寺鉱泉へ降りる道も見え,山深く広葉樹の海これが紅葉の季節ならと思った。鳥原山でゆっくりと景色を眺め、鳥原小屋への客引きを笑いながら楽しんでいるうちに、木道になり湿原へイワイチョウの花がまだ残って咲いていた。好天の歩きは気分も良い。鳥原神社の横へきれいな小屋があり13時に到着。この鳥原小屋を利用する人が少ないと鈴木先生の嘆きである。今日も私たちスポニチだけと判り、がっかりしている。鈴木先生は着くと直ぐ鳥原神社の扉を開け、柏手を打ちお参りした。さすが礼儀正しいと、先生の留守を預かる山の後輩と忙しく働く。今夜も山形名物芋煮のご馳走だ。庭のベンチで山仲間談義が賑やかに始まる。このひと時がたまらなく楽しい。夕方5時から鈴木先生ご自慢の山形牛入り芋煮に舌鼓を打ちながら美味しくご馳走になり、皆和気あいあいと満腹状態。鈴木先生が尾形先生を鳥原神社の神前でお神酒をご馳走したいと、私達もご相伴に預かった。真っ暗な闇に山形の町の明かりが眼下に広がりきれいだ。
 9月17日(月)夜雨が降った。でも幸いに天気は回復した。樹林帯の中歩きやすい道をひたすら下る。気持ちの良い広葉樹林、ブナの巨木もあり東北の山はちょっと奥に入るとブナの原生林があちこちにある。金山沢の水場で大休憩まだりんごやみかんをザックから出しご馳走してくれる友に感謝。最後の下りヒメコマツの茂る急坂を下り朝日川に掛かる吊橋を渡ると朝日鉱泉に200歩の登りで10時に無事到着。
 朝日連峰・この長く奥深い山・ヒナウスユキソウとヒメサユリの花の群落は日本一の山を三度も歩けたのはひとえに鈴木先生のお陰と感謝したい。この出会いはスポニチ登山学校の尾形校長で、常に情誼のあつい人間たれの教えである。

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