2007年(平成19年)8月20日号

No.369

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茶説

こんな医療制度はビョーキ(SICKO)だ

牧念人 悠々

 アメリカに国が運営する「国民健康保険」がないとは知らなかった。「国民健康保健」がある日本でも年々保険料が上がり年寄りが苦しんでいる。救急患者の病院のたらい回し、大都市への医師の偏在、医療ミスなど問題が少なくない。マイケル・ムーア監督の映画「SICKO」(8月25日から公開)は皮肉なしかも軽妙なタッチでアメリカの医療制度の問題点、恥部を容赦なく突撃取材で暴露する。
 アメリカでは国民は民間の保険会社に加入して医療を受ける。医者は民間の保険会社から給料を頂く。ここでおかしな事が起きる。患者に医者は「治療は不必要」と診断を下す。すると医者に「無駄な保険金」の支払いをしなくてすんだというので奨励金を支払う。懐が豊になるから医者はさらに治療が必要の患者であっても「治療は不必要」という。医者は患者を診察して病気を直すのを使命とする。この事実を暴露する女医も病院の担当者も出てくる。日本同様「医はお金」である。保険会社は何かと理由をつけて保険金を払わない。例えば「既往症」を故意に隠したなどという。何でも理由はつけられる。
 衝撃的な事実は9・11のニューヨークの事件現場で救命活動中、灰塵で肺や気管支・ノドを患った消防隊員、ボランティアの女性救命士などが病院で完全な治療を受けられないことだ。治療代がかかりすぎるからだ。そこでムーア監督はこれらの患者を外国人でも医療費がタダのキューバに2隻で連れてゆく。全員手厚い診察と治療を受ける。遺体の処理に当たった消防隊員は悪夢にうなされて歯ぎしりするようになり上の歯がが欠けてしまった。それを治すのには治療代が高くて手控えていたが、ここではタダで入れ歯を作ってくれた。しかも消防隊員らは9・11事件で献身的的行動をした英雄としてキューバの消防隊員たちに迎えられる映像も出てくる。医療費が無料なのは英国でもフランスでもそうである。その実態が紹介される。
アメリカでは6人に1人が無保険で1万8000人が治療を受けられずに死んでいるという。映画「SICKO」は保険に入っている人たちの話である。大きな歪みは保険会社と政治に密着である。それを取り持つのは医療ロビストである。共和党、民主党に保険会社に有利な法案を通すよう働きかける。もちろん多額の献金もする。医療費が無料というのは社会主義国の実施すべき政策だという。超大国のアメリカが保険充実度が先進国中37位とあっては打開策をとるほかあるまい。英国、フランスを見習って医療は無料にすべきであろう。日本もまた同じである。格差社会をなく一番手っ取り早い政策でもある。

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