2007年(平成19年)4月1号

No.355

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茶説

日中は新たな段階へ入る

牧念人 悠々

 中国の温家宝首相が来日する。7年ぶりの来日である。これからも日中の間には次から次に難問が起きるであろう。どの世界でも問題が起きるのが常である。それを上手く処理してゆくのが政治家の仕事である。温家宝首相は『戦略的互恵関係』の発展を期待すると表明している。これは昨年10月、訪中した安倍晋三首相も望んだところである。政治体制が異なる日中で『戦略的互恵関係』は困難なかもしれないが、是非構築してほしい。戦略的とは、日本と中国の平和・友好的発展を目標に置き、政治と経済を二つの車輪のように動かし両国の関係を高めてゆこうとするものである。批判的な新聞は『日中薄氷の互恵』と見出しをつける。目先のことしか見ない論である。先ずは両国の「長期的で安定的な関係を構築する」という意志が何よりも大切でそれを実現しなくてはいけない。『薄氷』ではなく『強く、熱い希望』である。日中関係は戦後60年の歴史の上に立って築かれるべきである。中国は戦後日本が他国に銃を向けた事が全くないことを知るべきだ。これは日本が「国際紛争解決の手段として武力の行使」をしなかったからである。さらに大東亞戦争の教訓は「日本はけして中国と戦争をしてはいけない」である。このことは中国に対して卑屈になれとか謝罪せよということではない。言うべき事は言わなくてはいけない。中国の東シナ海のガス田開発問題に対して中川昭一政調会長が「黙って自分の財布が盗まれれるのを見ている」と発言したのはよいことだ。時には喧嘩もいい。1979年9月、日中国交回復が成立した時、毛沢東主席と田中角栄首相との会談の席上、毛主席は「ケンカはすみましたか。喧嘩をして初めて仲良くなれるものです」と語ったという。中国には「不打不成相識」(喧嘩は仲良しのはじまり)という言葉がある。いまこそ中国とは忌憚のない意見を戦わして議論すべきである。けして下手な『政治的』判断で妥協をしてはならない。
日本も13億人の人民を食わしてゆくのは中国としても大変なことだと理解すべきである。共産主義を唱えながら農民と都会生活者の格差は広がるばかりである。農民の暴動が頻発しているといわれる。安倍首相の訪中以来経済面の成果が上がっている。温家宝首相の訪日でそれがさらに倍加するのは間違いない。
私は首相の靖国神社参拝を支持する。「行くともいかないともいわない」という安倍首相の心のうちを忖度すれば何れ参拝するとみる。温首相は「目にしたくないものだ」といい、「双方は政治的障害を克服することで一致している」との態度をとっている。中国も死者には寛容な文化を持つ日本を理解しなければならない。松山には日露戦争で捕虜となり日本で捕虜生活中死亡したロシア兵の墓を立ていまだに祀っている。墓前には花が絶えず供えられている。その延長線上に靖国神社問題がある。小泉純一郎前首相が言う「心の問題」であり「日本の独特な文化」の問題である。これから長期に付き合ってゆかねばならないとすれば文化の違いを知り、納得してむらわねばならない。
今回の訪日が「氷を溶かす旅」であれば「死者に寛容で、万事を水に流す」日本文化を体得する旅にして欲しい。それでこそ日中は新しい段階に入ったといえる。

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