2006年(平成18年)6月10日号

No.326

銀座一丁目新聞

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茶説

連続する小さな事故は大事に至る

牧念人 悠々

 昔エレベーターには女性のガイドが降りる階数を聞き、乗客の安全にも気を使っていた。エレベーターが日本に現れたのは、明治23年10月。浅草公園にできた12階建ての凌雲閣で、8階まで電気モータによるエレベーターが設備された。20人乗り、米国製、15馬力であった。今ではコンピューターの発達で自動が当たり前になってしまった。日頃、使うエレベーターに誰もが安全か危険がの意識をせずに乗る。私も銀座のビルのエレベーターに不安を抱いたことはない。東京・港区のマンションで起きたエレベーター事故(6月3日)はこの安全神話を砕いた。事故に遭った高校2年生(16)は12偕でとまったエレベーターから自転車に乗ったまま後ろ向きで降りようとしたところ、突然エレベーターが動き出し、エレベーターの床と12階の天井に体を挟まれて胸や腹部を強く圧迫されて窒息死した。
 調べてみるとエレベーターの不具合はこれまでにも20件とも40件とも言われるほど起きている。しかも香港(02年1月)とニューヨーク(04年8月)で死亡事故さえ起きている。それを知りながらエレベーター製造会社「シンドラー」(東京都江東区)も保守管理会社「エス・イー・エレベーター」(台東区)も港区住宅公社も何等の対策も打っていなかった。「不作為の殺人」というほかない。
 小さな事故は必ず大きな事故につながる。小さい事故のうちに事故の原因を一つ一つ潰していけば未然に大事故は防げる。「事故報告」を受けて何もしないのは無責任である。昨今、人の安全に携わる企業・職場に働く人々に「危機管理」の配慮がなさ過ぎる。万一のとき人命に関わるという想像をして予め備える努力をしない。経費を詰めて効率よくやるとか営業優先は「人命尊重」 「安全第一」と言う配慮をした上でなすべきことである。今回の事故はコンピューターの落とし穴ではなくてそれを使う人間の怠慢によるものでった。

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