2006年(平成18年)4月20日号

No.321

銀座一丁目新聞

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安全地帯(141)

信濃 太郎

 船洗うホースのしぶき風光る

 知人の岡井美原子さんのはじめての個展を見る(4月6日〜11日・京橋・ドゥ画廊)。銀座俳句道場の同人であり、本社が開いていた『心理学教室』の生徒でもあった。母上は画家にして書道家である。絵を書くとは知らなかった。「水辺」をモチーフに35点の作品が並ぶ。目についたのがヨットハーバーに憩う幾十艘のヨットの絵である。静かさが漂う中に深みが感じられる。グループで油壺へスケッチ旅行にった際の作品である。「そう、そう、このとき作ったのがこの俳句でした」と「船洗うホースのしぶき風光る」と読む(銀座俳句道場の3月の兼題が風光る。「人」に入賞した)。私はこの人のキャラクターが好きである。絵に俳句によくその人柄が出ている。控えめだなと思っていたら意外と大胆。発想はユニーク。静と動のバランスがよく取れている。隅田川に掛かる橋を題材にした絵もいくつかある。「炎天の筏はかなし隅田川」と石田波郷は詠んだ。
 そういえば、「心理学教室」のころおかしな夢を見た。彼女が傍に居て私が川か海の中州に向ってゴルフをするのだが、一向にゴルフの球が中州に届かない。時たま届く。彼女は黙っているだけである。「夢はメッセージである」とすればこの夢は「ひたすら努力せよ」と言うことかそれとも「今やっている仕事はむだだからやめよ」と言うことか悩んだ事がある。それから10年私は同じことをしているのに、岡井さん黙黙として新しい分野を開拓している。
 画廊の奥に絵はがき大の作品「デカルコマニー」が22点があった。面白いオブジェである。「つや紙の上に垂らした絵の具のうえにつや紙を伏せて適宜に押さ、はがす時にできる影像」である。新しいものに挑戦するところがよい。その顔は生き生きとしてまぶしかった。

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