2006年(平成18年)2月1日号

No.313

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茶説

皇位継承のあり方を考える。

牧念人 悠々

 「皇室典範に関する有識者の会議」が17回(この他3回の非公式会合有り)の会合を重ねた結果、昨年11月「報告書」を小泉首相に出した。その結論は「古来続いてきた皇位の男系継承を安定的にに維持することはきわめて困難であり、皇位継承資格を女子や女系の皇族に拡大することが必要であるとの判断に達した」ということであった。これに対して賛否両論が渦巻いている。私は率直に言って古来からの伝統である「皇位は、皇統に属する男子が、これを継承する」(皇室典範第一条)を守ってほしいと願う(八名十代のみ女帝)。しかし現実には皇位継承者の不在が心配されるようになってきている。昔と違って側室制度は問題外だし、少子化の傾向もあって男系男子のみによる皇統の継続は次第に困難になってくる。単純に「女帝もやむをえないかなあ」と考える。この問題を研究され詳しい所功さんは「皇統の安定的な永続には女帝もその子孫=母系による継承も認め順位は男子優先が望ましい」とその著書「皇位継承のあり方」(PHP新書)で主張される。それもそうかなとも思う。答申を熟読された数学者の藤原正彦さんは「2千年の皇統を論ずる上での原点がなんと日本国憲法と世論だったのである。(中略) この二つを原点とするなら、実はその時点で結論は一義的に定まってしまう。男女平等により長子優先である。(中略) 皇族は憲法の外にいる人である。皇族には憲法で保障された選挙権も居住や移動の自由や職業選択の自由もなく納税の義務もないのである。男女同権だけを適用するのは無茶な話である」と大反対される。人類の宝石とも言うべき伝統を守れと強調される。伝統とは「時代や理屈を超越したもの」という(産経新聞「正論」より)。藤原さんは近著「国家の品格」(新潮新書)でも「論理」よりも「情緒」「形」の意義を説き、伝統、武士道精神が大切であると書く。とすれば、「十親等はなれた者を世継ぎとするなどという綱渡りさえしながら必至の思いで男系を守ってきた」先例に思いを致せば、皇室典範第一条を改正しては絶対にいけないという立場にたたざるを得ない。
 三笠宮寛仁親王さまは桜井よしこさんとの対談(月刊「文芸春秋」1月号))でこう発言される。「2665年間も続いてきた世界でも類を見ない、まことに稀有な伝統と歴史を、僅か一年、17回の、30数時間の会議で大改革してしまうという事が果たして認められるのでしょうか、あまりにも拙速にすぎませんか。(中略) これら女帝(八方、何れも父が天皇であった男系の女子)と今認められようとしている女系の天皇というのは全く意味合いが違い、これからやろうとしていることは2665年間つながってきた天皇家の系図を吹き飛ばしてしまうことだという事実を、国民にきちんと認識してもらいたい」この意見に全く賛成である。小泉首相よ 慌てず、ゆっくりこの問題を論議したほうがよい。10年かかっても20年かかってもよいではないか。

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