2005年(平成17年)12月10日号

No.308

銀座一丁目新聞

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茶説

安物買いの銭失い

牧念人 悠々

 子供ころからよく親から「安物買いの銭失い」と聞かされたものである。イギリスの諺にも「安い買い物をする時は二度考えよ」がある。耐震データを偽造したマンションを購入した居住者には大いに同情するがマンションを購入するとき何故「広くて安いのか」。さらに交通の便のよいものもある。そのことに疑問をもたなかったのか。強度偽造問題が明るみに出る前までは自分たちは「よい買い物をした」と思っていたであろう。もちろん、設計者、建築者、販売会社のやり方は言語道断である。わからなければ何をやってもよいといわんばかりの仕事のやり方である。世の中は善人も多いが悪人も少なくない。購入者にも責任がある。国なり自治体が公的資金を投入して面倒見てくれるようになった。だが、すべてを他人任せにするようなことはしないほうがいい。物事は全て自動扉のようにゆくものではない。「安い買い物」は危険だと考えたほうがよい。100円ショップの買い物ではない。ローンを組み、あるいわなけなしの大金をつぎ込む買い物である。テレビで「自分のマンションを持つのが夢でしたのに、悔しい」と嘆く主婦の姿を見るにつけ、それが夢だったらもっと慎重に物件選びをしなかったのかといいたくなる。公的資金投入の理由として強度偽造問題は「公の事務で建物の安全性に重大な見落としがあった」として国と自治体が問題解決の全面にたつことになった(12月7日朝日新聞)。本来、物件購入は私的な商取引である。消費者の判断で商売が成立する。商品そのものに問題があれば、作った者、販売した者に責任がある。昨今は産地のラベルを張り替えたり、国産を外国産と偽ったりする事犯が起きている。法律に違反する行為があれば当然処罰される。商品が安い場合、直ぐ飛びつくのではなく、その安い理由を究明せねばならない。知らなかったでは済まされない。酷な言い方だが、今回の場合、設計者、建築者、販売会社の素性を調べる必要があった。「安物買いの銭失い」は今もなお真理であるのを証明した耐震強度偽造事件である。

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