2005年(平成17年)11月20日号

No.306

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茶説

イラク派遣自衛隊の凱旋はいつか

牧念人 悠々

 イラク派遣自衛隊の期限が12月14日で切れる。小泉純一郎首相は日本を訪れたブッシュ大統領との会見後の記者会見で派遣を延長する意向を示唆した。いずれイラクが民主的な国家として独り立ちすれば撤退ということになる。専門家の話によると、撤収はそう簡単なものではないらしい。サマワからクウェートまで撤退するのに3カ月半、クウェートから日本へすべて引き揚げるのに2カ月はかかるであろうという(元陸上幕僚長富澤暉さんの論文より)。そうでなければ「整斉たる撤収」はできず「逃走・敗走」になると恐れている。この指摘は大切である。国益、国際協力、日米同盟、自衛隊の存在・役割などを考えれば「整斉たる撤収」が望ましい。できれば「錦の凱旋」をさせたい。「錦の凱旋」とは地味であってよいが、国民に祝福され、自衛隊の将来に明るい光が見えるような形式のものが良い。
 サマワで自衛隊は復興支援に十分な役割を果たしている。給水活動の支援は終わった。政府開発援助による大型浄水装置が地元民の手で運用されるようになっている。医療支援は診療所補修、医療機器の使用法指導など医療基盤確立に寄与した。毎日千人の雇用を果たしている。第一次、第二次派遣隊長の帰国報告を聞いた。自衛隊の練度は高く、規律・士気でも評価されている。これまで宿営地等に約10発の迫撃砲弾・ロケット弾が打ち込まれた。無事故であったのは幸である。「自衛隊のいるところが安全地帯である」と小泉首相が国会で答弁したようにこのまま「名答弁」で終わらせたい。
 国際政治はポスト・イラク戦争期を迎えていると指摘する学者がいる。ポスト・イラク戦争期の特徴は中東政治で「民意」(民主化)の持つ重みがかってなく大きくなった。そして「血(民主主義のこと)は水より濃いし」が実感される時代となろうという(11月9日「正論」拓殖大学海外事情研究所教授、佐瀬昌盛さん)。開戦以来最大の15万2000人の米軍を駐留させながらイラク国内での自爆テロが続き治安状態が一向によくならず、戦死者も増え、ブッシュ大統領の人気も落ち込んでいる時、この論文は的確な指針を与える。国際政治の方向もそれを認めている。現在、イラクに派遣されている多国籍軍は日本を含めて27国である。日本は最後までイラク復興支援を成し遂げて欲しい。それが国際協力、日米同盟にかなうことであり国益に合致する。

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