2005年(平成17年)10月10日号

No.302

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お耳を拝借(143)

「無駄な動線」

芹澤 かずこ

  年からいったら間違いなく『おばあさん』の仲間入りをしているのに、普段は全くその自覚がない。ところが、左足首のアキレス腱を痛めてしまい、湿布と包帯で足を固定しているが、石膏で固めたわけではないから、どうしても足首が曲がって痛くて歩行も困難を極めた。何かの時にと買っておいた『折りたたみの杖』が役に立ち、駅のエレベーターも初めて利用した。すっかり『おばあさん』の気分になって、それだけでも滅入っている。
 家の中では『すり足』をして、なるべく足首を動かさないようにしているが、普段何気なくしている行為でも、いざどこか不自由なところが出来て動きに制限が加わると、いかに多くの動きをしていたかに気がつく。
 朝、仏壇を開け、熱いお茶を供え、生花の水を取り替え、お線香を焚く。洗濯機にお風呂の残り湯を入れ、タイマーをかける。ゴミを捨てる。庭に水を撒く。掃除をする。片付けもの。食事の支度。買い物。さして広くもない家なのに何度も廊下の行き来をする。その上にもの忘れをするので一回では用事が済まなくて、無駄な動きの方が多い。この先、この『無駄な動き』がどんどん増えるのではないかと危惧するが、それでも『自由に動ける』ことは結構なことだと思いたい。



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