2005年(平成17年)10月1日号

No.301

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競馬徒然草(60)

―無敗の3冠馬への夢― 

  神戸新聞杯のレース後、「あの馬は強いね」とという言葉は多く聞かれた。「凄い」のほかには適切な表現を知らないかのように、「凄い」を連発する人もいた。ディープインパクトの強さについては、ほかに表現すべき言葉を失わせるようだ。
 レースを振り返ってみる。スタートはよくなかった。むしろ出遅れの部類に入る。馬群に取り残された格好の2頭のうちの1頭だから、一瞬ヒヤリとさせた。「まさかの出遅れ?」と、不安も感じさせた。だが、シンガリに取り残されたわけではないから、致命的な出遅れとはいえない。春のレースでも、このようなスタートをしているから、予定通りのことなのだろう。そう思われたのは、武豊騎手の落ち着いた騎乗ぶりを見てからである。
 どのあたりからペースを上げ、好位置に取り付いていくか。いずれにしても、4コーナーでは先行馬群に並びかけるだろう。勝つにはそれ以外には考えられない。と見ているうちに、3コーナーから動き始めた。外側からスルスルと内の馬群を交わしていく。ようやく馬が騎手の合図に応えて、ハミを取ったようだ。スピードを加速したのだが、武豊は手綱を抑えたまま。楽な手応えで、次々と馬群を交わしていく。4コーナーを回るときには、外から先行馬群に並びかけていた。このレース運びの自在性には、眼を見張るものがある。馬群の不利を受けない外を回ったのは、武豊の賢明な策戦だろう。後は、直線で抜け出すだけだった。
 終わってみれば、レースは圧勝。タイムは1分58秒4のレコードタイム。2着シックスセンスとの差は2馬身半だが、最後は手綱を抑える余裕。決定的ともいえる2馬身半だった。夏を休養にあてた秋緒戦は負けるケースも少なくないが、夏場も十分な調整を積んだようだ。この後は、3冠のかかっている菊花賞が大目標となる。もし勝てば、無敗の3冠馬となる。この大記録は、シンボリルドルフ(1959年)以来、史上2頭目。その栄誉に輝くのも、至難な業ではないように思われる。
 なお、武豊騎手は、神戸新聞杯の当日は5勝を挙げ、前日の7勝お含めると、2日間で12勝。これはJRA最多勝利記録。過去の記録は、武豊騎手本人と岡部幸雄騎手が持つ10勝だった。名馬と名騎手のコンビが創り出す物語は、今年の秋の話題をさらに盛り上げることになりそうだ。

( 新倉 弘人)

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