2005年(平成17年)10月1日号

No.301

銀座一丁目新聞

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花ある風景(215)

並木 徹

友人の書に驚いた
 

 毎日新聞のOB二人から別々に「湖心社書展」の案内を頂いたので見に行った(9月21日・東京銀座画廊美術館)。真っ先に目に飛び込んできたのは寺田健一君(毎日新聞書道会専務理事)の「玄流」であった。荒削りで力強い筆致である。8月軽井沢で毎年開く恒例のゴルフ会で2日目に同じ組でプレーをしたが、その豪快なショットを思い出した。高尾義彦君(毎日新聞監査役)の「崇山峻嶺」は字に品がある。王義之の「蘭亭叙」の一節で、先生について324文字を4文字づつ習っているという。彼は「銀座俳句道場」の同人である。最近の作に「ヒロシマを語る若者遠花火」がある。俳句も達者である。意外な人の書を見つけた。岸井成格君(TBSキャスター・毎日新聞特別編集委員)である。「以和為貴」はバランスがよい。3月同台経済懇話会で講演を依頼したところ快く引き受けてくれた。当時話題となった朝日新聞対NHKについて話をしてくれた。会員からは「わかり易くてマスコミの実態がよく理解できた。毎日新聞にもこのような良い記者がいるのか」と絶賛された。びっくりしたのは清水雪嶺(一郎)の「般若心経」であった。262文字が形良く丁寧に書かれている。かって毎日新聞社会部で「察デスク」を一緒にやり、いまの天皇様のお后探しを取材した仲間である。彼の誠実にして堅実、すべての仕事に手を抜かない人柄はつとに知られる。それゆえに皇太子妃候補の美智子様は清水君に絶大な信頼を寄せられた。「般若心経」を見ていると清水一郎の顔が浮かぶ。あまりじっと見ているので、独りの女性が近付いてきた。「湖心社」本部の原梨葉さんである。聞けば書道歴は48年。毎日筆をとらないと気持ちが悪いという。出品作品は日夏耿之介の詩「琥珀にひかる双瞳を努めて遁れたいゆゑに還儂は漂泊ひいづる門出である・・・」手馴れた筆使いである。文字に濃淡があり釣り合いがよく取れ、見事と言うほかない。今は亡き金子鴎亭さんの言葉を思い出した。書を見る場合は会場の真中に立つと、優れた書は光って見える。光っている書はリズムがあり、バランスが良くとれており、筆の運びに遅速があリ、余白の使い方が上手いという。毎日新聞の北村正任社長と橋本達明主筆も出品していたのには感心した。暇を見つけて書をやろうという思いに駆られた。

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