2004年(平成16年)9月1日号

No.262

銀座一丁目新聞

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安全地帯(84)

−信濃 太郎−

勝負は心、技、体の優れた者が勝つ
 

 アテネ五輪の日本の金メダルは16個を数え、40年前の東京大会と同じであった。そういえば、この大会で男子マラソンで円谷幸吉選手が銅メダルを獲得した。今回は5、6位に入賞するのがやっとであった。女子のマラソンで野口みずき選手が堂々と金メダルを取った。16の金メダルのうち9個が女子選手が獲得した。時代は確実に変わりつつある。到来しつつある「やまとなでしこ」時代をより印象づけた 。
 アテネ五輪のテレビで見ていて勝者は、心、技、体が優れていると痛感した。心とは強い意志、不撓不屈の精神力、負けじ魂である。技は完全なる技術である。日頃の鍛錬である。なまなかの鍛え方では世界に通用しない。極限まで自分の体をいじめ抜いた者でなければ勝てない。この中に競技を進める上での戦術、戦略も含まれる。体とはどん な無理な条件を与えられてもそれにめげない体力である。もちろん、精神力だけでは駄目である。技、体力だけでもいけない。女子のソフトボールにしても「絶対金メタルをとる」という「心」と ソフトボールの「技術」はむしろ他の外国チームより勝っていたが、優勝したアメリカチームよりすこしばかり体力が劣っていた。パワーヒッターがいなかった。アメリカの腕力に屈し「銅」にとどまった。柔道100キロ級の井上康生が完敗したのは「技」「体」は他より勝っていた。だが「心」に問題があったように見受けられた。「心ここにあらざれば、見れども見えず、聞けども聞けず」(大学)という。心が柔道に集中していなかった。そうでなければあのように外国の選手にやすやすと井上康生が投げられるはずがない。敗戦の男は選手団の主将として最後まで現地にとどまり、日本チームを応援した。次回を期待したい。
 女子のマラソンをみよ。気温35度。高低の差175メートル。レース条件は過酷である。参加者82名中棄権16名を数える。マラソン世界記録保持者、イギリスのラドクリフは36キロ地点で棄権した。「走る気力を無くした」と無念の涙を流す。「36キロ」の標識を見て彼女は「まだ6キロもある」と氣が萎えてしまったのだろう。「身長1メートル50、体重たった40キロしかない小さな野口がラドクリフに苦い涙を流させた」(ロイター通信)何故勝ったのか「心、技、体」が充実していたからである。家庭は裕福でなかったが、高校に進学させ、陸上をつづけさせた。5ヶ月の失業期間中も失業保険で生活し筋力強化だけは怠らなかったという。この様な選手が金メタルを取るのは自分のことのように嬉しい。野口の勝利のテレビは何度見ても良い。心に刻んでおきたい。ハンマー投げの室伏広治は金メタルにわずか28センチ足りなかっものの、金メダルのハンガリーのアヌシュが薬物使用の再検査に応じなかっため失格となりくり上げとなった。銅にとどまった五輪野球日本チームは残念であった。球神は何故か日本に意地悪であった。嘆くことはない。4年後の北京では野球の日本チームに球神は微笑えんでくれるだろう。

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