2004年(平成16年)6月20日号

No.255

銀座一丁目新聞

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茶説

自衛隊の多国籍軍はやむえをえないが・・・



牧念人 悠々

  国連のイラク決議で米英中心の多国籍軍の駐留継続や暫定政府の完全主権を保証し、民主化、復興などに国連が主導的役割をになう事が明示された(6月8日)。小泉首相はいちはやく自衛隊の多国籍軍への参加を表明した。「誰よりも先にブッシュにそれを伝えかったのだろう」と朝日新聞の社説は皮肉った(6月10日)。態度をあいまいにするより早い決断の方が望ましい。18日には参加の閣議決定をした。多国籍軍移行後もサモワでの自衛隊の活動は実質的に何等変わらないわけだが、自衛隊が外国で活動する意義を憲法やイラク特措法との関連、集団自衛権の解釈、多国籍軍の指揮権の問題などにからめて答えるべきであったろう。そうすれば、今後自衛隊を海外へ派遣する場合の一つの指針になったであろう。
 たしかに自衛隊の多国籍軍参加はいくつかの問題がある。日本は1991年湾岸戦争の際、多国籍軍の参加を拒否した。このときは「国連軍の司令官の指揮のもとに入り、行動し、国連軍の目的・任務が武力行使を伴うものであれば、憲法上ゆるされないと考えている。その任務・目的が武力行使を伴うものであっても武力行使と一体とならないようなものは憲法上許されと解している」との見解であった。
つまりサモワでの自衛隊の活動が多国籍軍の中に入っても武力行使と一体なるのかならないかということになる。政府は武力行使と一体にならず、いままで自衛隊が任務としていた人道支援と復興事業を支援するから問題にならないという。自衛隊のサモワでの実績がこれを示している。
 多国籍軍の統一指揮下に入る点に問題はないのか。この点について政府は日本の指揮下に入り自衛隊で主体的に判断できるとの見解である。サモワから出て多国籍軍とともに「敵」と戦う恐れはまずないと思われる。可能性があるのは治安維持に当たっているオランダ軍が敵に襲われて救援を求めてきた場合である。「いかなる条件のもとでも外国での武力行使をしてはならない」という原則を固守するか、「死に直面している友人を見捨てるのは人間として恥ずべきことである」という普遍の原理を守るかを指揮官が問われることになる。戦場の状況は千差万別である。指揮官の判断に任せるほかあるまい。イラクはテロが頻発しており、全土が戦場である。政府がサモワは非戦闘地域であるといっても、テログループは狙った所に出撃できる。「他国の武力行使と一体化しない」といってもそのような事態に巻き込まれる恐れが十分ある。そのことを十分頭に入れておくべきであろう。

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